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しおりを挟む一方、ダリス侯爵がハルモニア伯爵家に来たことで、婚約解消が即日になるという嬉しい誤算があったパトリシアは、今度こそブライアンと婚約できるよう、父に詰め寄った。
「お父様、私はブライアン・ホールズ様と婚約します。もう、どこからの横やりにも押し切られないように頼みましたよ!」
「わ、わかっている。ホールズ伯爵家の次男だったな。お前が選んだ男なら信用できる。
それにしても、イゾベラをこんなすぐに追い出さなくてもよかったのではないか?」
父はイゾベラに無関心だったため、彼女がいろいろとやらかしていたことを全部知っているわけではない。
「追い出されるのがわかっている状態で屋敷に入れたら、何を盗まれるかわからないですからね。」
あまり高価ではない物は、いつの間にか彼女の部屋に置いてあっても指摘せずにいた。
キリがないからだ。
継母が何度言っても、イゾベラは伯爵家の物は自分が使っていいものだと思っていた。
「盗む?一度報告は聞いたが、あの娘は何度か窃盗していたのか?」
「ええ。一度、質屋に持ち込みましたが、まだ成人していなかったので断られたということもありました。イゾベラの私物はワンピースと下着くらいなのですから、メイドに纏めさせた方が確実です。」
イゾベラが着ていたワンピースと下着は、ここに置いていても捨てるだけのものであるため、彼女の私物と認めることができる。
しかし、その他は彼女に貸し出していたと言えるだろう。
「お継母様はイゾベラの対応に苦労なさっていました。引き取ったことを後悔されていましたから。
イゾベラは産みの母親を知らないのに、顔も性格もよく似ているそうですわ。」
自分勝手なところがそっくりだそうだ。
勉強も努力も嫌い。
楽な方に逃げる傾向があり、貴族の堅苦しい暮らしより平民の自由な暮らしに憧れた。
顔のいい平民男に傾倒し、妊娠して、駆け落ちするように結婚したが、夫が優しかったのは最初だけだ。
貴族令嬢だったサラーナは何もできなかったのだから、夫はすぐに嫌気がさして浮気し、逃げた。
「中途半端に放り出しては、お継母様が保護責任を放棄したと思われてしまいますので機を待っていましたが、今回、リチャード様に粉をかけてくれたお陰で学園卒業を待たずに追い出すことができましたわ。」
パトリシアの晴れ晴れとした顔に、父は若干顔を引き攣らせたが、頷いていた。
「イゾベラのことはお前がずっと対処してくれていたんだな。助かったよ。不甲斐なくて申し訳ない。」
パトリシアは、極力、父には知らせずに、継母リーシェにもイゾベラのことでそんなに気を病む必要はないと言ってきた。
イゾベラがいずれ出て行くことは決まっていたのだから、何をしようとどうでもよかったのだ。
どうせ、大したことはできないとわかっていたから。
それでも、イゾベラが目の前からいなくなって空気が美味しいと思うほど、彼女の存在は伯爵家の澱みでもあったのだと気づき、パトリシアは意外にストレスを感じていたのだと知った。
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