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しおりを挟むオーブリーは、愛人コゼットと別れるつもりだと婚約者の父であるワームテッド伯爵に言ってしまった。
もう後戻りはできないと思った。
だが、気持ちが固まりスッキリしたようにも思えた。
「愛人の対処はあなたを信じよう。助言するとすれば、向こうに落ち度があるとしても無一文で放り出さないことだ。愛人だと弁えていない女は怒りの矛先がどこに向くかわからないからね。」
ワームテッド伯爵は、娘であるサンドラにコゼットの怒りが向かないようにしろと言っているようだ。
「……助言、感謝します。」
手切れ金と今後関わらないと約束させてサインさせることにしよう。
「それで婚約のことだが、こちらとしてもコルタナ侯爵家との縁を無くすには惜しいと思っている。」
「それはありがたいことです。」
「だが、後継を望める保証がなくなった今、条件をつけたい。」
「どんな条件でしょうか。」
「子供ができなければ、コルタナ侯爵家の親戚から養子をとることになるだろう。その養子の婚約者をワームテッド伯爵家の親戚の者の中から選ぶということを。」
オーブリーとサンドラで血筋を繋げることができなければ、次代で血縁を結ぶということか。
「男でも女でも、優秀な者を後継にすればいい。こちらは年齢に合う親戚を見繕う。人選に悩むようであれば、私も協力しよう。そういうことでどうだろうか?」
……断れるはずがない。
サンドラと婚約解消することになれば、今度は条件の悪い貴族と婚約することになるだろう。
まだオーブリーの生殖能力に問題があると確定しているわけではないのに。
ワームテッド伯爵は、もし子供ができなくても構わないと条件を提示してくれた。
これはコルタナ侯爵家にとっても悪い条件ではない。
19歳で侯爵になったオーブリーは何事にも経験が浅い。
ワームテッド伯爵は爵位は下だが親世代の野心家だ。
協力をしてもらうたびに、コルタナ侯爵家はワームテッド伯爵に絡めとられるかもしれない。
だが良策がない以上、ワームテッド伯爵と共に前に突き進むしかないだろう。
「サンドラ嬢が25歳になるまで。その間に子供をもうけることができなければ養子を検討します。それでどうでしょうか?」
25歳を過ぎてからの初産は危険が高まると言われている。
子作りをするのは、25歳が限度。
そう初めから決めてしまおう。
「いいでしょう。娘にも伝えておきます。愛人と手を切るということも。」
コゼットだけでなく、その後も愛人は作るなということか。
ワームテッド伯爵からしてみれば、妻との間に子もいないのに愛人を囲うのは早すぎると言いたいのだろう。
後継を作り、爵位を継ぎ、愛人を囲う。
それが多くの高位貴族の男が辿る道であるが、オーブリーはイレギュラーだった。
結婚前から愛人がおり、結婚して爵位を継ぎ、後継はいない。
一人前にもなっていないのに生意気だと言われているように感じた。
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