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3.
しおりを挟む騎士たちが上官に報告すると、鼻で笑われた。
「誰も悲しんでいないから、夫人が指示した殺人で使用人たちも同意してたって言うのか?
使用人の誰かから聞いたっていうのならわかるが、お前たちの推測なんだろう?
事故をそうやって疑いだしたらキリがない。
次々仕事が舞い込むんだから、事故で書類を纏めて持ってこい。」
「ですが……では、遺体を届けた後、葬儀が終わるまでの数日間、調べてはいけませんか?」
「……そんなに気になるのか?
もし夫人が指示していたのなら、子供たちにとっては母親が父親を殺したことになる。
いいか?全ての罪を明らかにすることが幸せになるとは限らない。
疑いがあっても、調べなければ単なる事故だ。
この事故もそうあるべきかもしれない。
だが、お前たちは誰も幸せになれない結果になるとしても調べるのか?」
「……それも仕事だと思います。」
「そうか。まぁ、この仕事をしていると誰もが一度は似た経験をする。
例えば、貴族と平民の身分の差はかえられない。
貴族の馬車が平民を引いても特に罰はないだろう?馬車が悪くてもな。
それに、貴族では男が優位だ。女子供は我慢が多い。
理不尽なことはいろいろある。
悪質でない限り、グレーはグレーのままがいいとそのうち思うようになる。
ま、それは俺の方針だ。
舞い込む仕事の合間に調査するなら問題ない。
ただし、葬儀を終えるまでに証拠・証人がなければ終了だ。いいな?」
「はい。ありがとうございます。」
騎士たちは複雑な気分になっていた。
疑いがあるのなら、何が何でも調査しろと言われると思っていたからだ。
「子供から母親を奪う結果になるかもしれないんだな。母親の殺人指示が判明すると。」
「……ですね。なんだかグレーを白にしたくなっちゃいました。」
「そのために調査するのもいいんじゃないか?」
「そうですね。疑惑が晴れることにも調査の意味があるかもしれません。」
そうして遺体を伯爵家に引き渡し、数日後の葬儀までに時間の限り調査した3人が得られた結果は、グレーが黒に近くなったのではないかと思えた。
一つ目は、夫人に愛人がいるのではないかということ。
護衛と思われる人物と親しげにしていると聞いたのだ。
二つ目は、亡くなった夫の子供を妊娠していると思われる女性が現れたこと。
離婚で次期伯爵夫人の座を失う恐れが本当にあったのかもしれない。
三つ目は、御者の娘が亡くなった男に殺されていたこと。
病死として処理されていたが、実際は亡くなった男を殺そうとして逆に殺された。
いわば男の正当防衛。
御者の娘がなぜ殺そうとしたのかは不明だが、切りつけたナイフで逆に刺されて亡くなった。
これは数人の使用人が見ていたらしく、事実だろう。
平民が貴族を切りつけたのに病死とされた。
父親である御者にもお咎めがなかったようだ。通常ならば主人に感謝するはず。
だが娘を殺された御者が、主人を殺したいと思っても不思議ではない。
あるいはその気持ちを夫人が利用したのかもしれない。
この3つの結果を上官に報告すると、状況証拠だけにはなるが捜査終了とすることができなくなり、夫人への取り調べが許可された。
ただし、証拠が一つもないためにひとまず伯爵家での聞き取りとなった。
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