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『王太子妃殿下がカールストン公爵の婚約者だったの。』
義母がそう言った。
カールストン公爵が長い間独身でいたのは、王太子妃殿下のことが忘れられなかったから。
ブランシェにはそう思えた。
「どうして、婚約を解消することに?」
「王太子殿下が奪い取った。簡単に言えば、そういうこと。」
王太子夫妻には子供が三人生まれている。
ブランシェには仲のいい夫婦に見えた。
結婚相手が変わっても、妃殿下は夫を愛し、幸せを築いていた。
しかし、残されたカールストン公爵は妃殿下に未練たっぷりで、なかなか結婚する気になれなかった。
そういうことらしい。
…………本当に?
ブランシェは嫌な想像をしてしまい、身震いがした。
ひょっとすると、義両親も同じ想像をしたから口が重くなったのかもしれない。
「ブランシェ?どうしたんだ?」
妻の変化に気づいてくれるのは嬉しいけれど、もう少し物事を深く考えるようにアンゼムに言いたい。
そんなアンゼムの気遣いを無視して、ブランシェは義両親に聞いた。
「二人は仲がよかったのですか?」
「ああ。」
「幼馴染で小さい頃から婚約していたわ。」
うわーっ………
「可能性、あると思います?」
「ないとは言い切れん。」
「協力者は必要ね。」
そうよね。妃殿下だもの。
「あのさ、三人がなんの話しているのかわからないんだけど……」
ブランシェと義両親は無言でアンゼムを見た。
わかっているわ。アンゼムだもの。
わかるように説明してあげる。自分の考えもまとめられるしね。
「カールストン公爵と妃殿下は幼い頃からの婚約者だった。でも、王太子殿下が妃殿下のことが欲しくなって二人の婚約を解消させて自分の婚約者にした。……いつ頃のことですか?」
「学園に入学してすぐね。」
なるほど。王太子殿下は一目惚れしたのかな?
オフィーリア王太子妃殿下、すごく綺麗な方だもの。
「どうして入学まで会ったことがなかったのでしょうか。」
「婚約者のいない令嬢が王太子殿下の婚約者候補だったから。オフィーリア妃殿下は幼い頃から婚約していたし、王太子殿下の婚約者は隣国の王女になるとずっと思われていたの。」
だけど、王女との婚約は実現せずに、国内から婚約者候補を募ったらしい。
その中に王太子殿下のお気に召す令嬢がおらず、学園に入学する歳になってしまった。
そこで、婚約者のいるオフィーリアが目に留まってしまった。
「当時のカールストン公爵は息子の婚約解消に反対しなかったのですか?」
「……国王から直に頼まれたら嫌だと言えないのが臣下だわ。『唯一の妃として大切にするから譲ってくれ』って言われてしまったらねぇ。息子より国の安寧。公爵はそういう方だったの。
オフィーリア妃殿下の公爵家もそうね。娘が次期王妃、国王の母となれることは家の誉れだもの。」
本人たちの意思は完全に無視ってことね。
「両家の親も婚約解消に同意したことで、カールストン公爵と妃殿下の婚約は解消されて、王太子殿下と妃殿下の婚約が結ばれることになった。二人は卒業後に結婚して、子供が三人。
なのに、婚約解消した後のカールストン公爵は新たな婚約をしないまま十数年。妃殿下に未練たっぷり。」
アンゼムを見ると、なるほど、と頷いていた。
ここまではいいらしい。
で、この後は突拍子もない想像だから、アンゼムは思いつかないのよね。
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