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しおりを挟むカールストン公爵とオフィーリア王太子妃殿下がグレースの両親であるかは親子鑑定すれば判明する。
しかし、そうなると大騒動になるだろう。
カールストン公爵家はもちろんのこと、オフィーリア様の実家も公爵家。
そしてオフィーリア様は王太子妃殿下であり、まだ幼い三人の王子・王女の母親なのだから。
「二大公爵家が咎を受け、王族である王子たちの今後にも影響を及ぼし、国が揺れてしまうことになりかねない。ただ罪を裁けばいいという問題ではないだろう。今ならまだ大事にせずに済むかもしれない。」
義父の言葉に、ブランシェはグレースが助かる道があるのであれば、そこに希望を見出したかった。
「例の騎士団の隊長に来てもらおう。あるいは団長まで話が伝わっている場合は団長もだな。」
「どうなさるおつもり?」
義母が義父に聞いた。
「ひとまず、騎士隊長にカールストン公爵に話を聞いてもらう。グレースと血の繋がりがあるかどうかをはっきりさせなければ、先には進めない。
問題は禁術の書物をどうやって手に入れたか、だ。その書物の所在確認が必要だろう。
そして、カル・イーストが魔術を施してブランシェに胎児を移したのが誰の主導だったのか。
それによって、誰の罪が重いかでその先を判断せざるを得ない。
もちろん、国王陛下にはありのままを話した上で、最終的な判断を下してもらわなければならないが、陛下としても王太子妃殿下の罪は隠したいだろう。孫たちの汚点になるようなことは避けたいはずだ。」
つまり、まだ隠蔽することもできると考えられるわけで。
そうなると、グレースはカールストン公爵の隠し子として引き取られるという可能性もあるということ。
おそらく、母親の身分不明の庶子として。
それがグレースにとって幸せに繋がるかどうかはわからないけれど、修道女一直線だった道がいくつもの可能性のある道にわかれたように思えて、ブランシェは心が軽くなった。
その夜、アンゼムが言った。
「グレース、どうなるかな。ここで育ててもいいと思っていたけど。」
「我が子じゃなくても、産まれた時から一緒に過ごせば離れ難いわね。」
「……最悪の場合、誰かうちの使用人の養子にするのはどうかな。たとえばオリーブの義娘ということにして将来パッティの侍女になるとか。」
公爵の娘を侍女にするなんて普通ではあり得ないけれど、最悪の場合だものね。
「それも一つの手かもね。私と一緒に監禁されていたことになっているから、私たちの養女にすると私の子じゃないかって素性を疑われそうだし、親が見つからないから使用人の養女にして面倒を見ることにしたっていうのは変じゃないかも。」
孤児院や修道院に行くよりもいいのではないか。
なぜ自分が巻き込まれたのかはわからないけれど、グレースを育てた母体として意見を聞いてもらえたらそうしたい。
「ブランシェ。」
「なあに?」
「……抱きたい。」
グレースを産んでからひと月以上が経ち、もう閨事をしても支障はなかった。
以前は妊娠中や産後で閨事ができない間は、アンゼムの発散をブランシェが手伝ってやることもあったが、浮気した手前、言い出しにくかったのだろう。
浮気をこれ以上咎めないと決めたのだから、妻として応じるべきである。
「ええ。抱いてほしいわ。」
肌を重ね、リンゼが夫に触れ、夫もリンゼに触れたのだと心が悲しんだのは最初だけ。
アンゼムが愛しているのはブランシェなのだと伝わってくるから。
だから、もう誰にもとられないように、夢中になってアンゼムを求めた。
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