結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。

しゃーりん

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アルバートとの結婚式の日は曇天だった。

しかし、リオネルとの結婚式の今日は晴天である。

そんなことで今後の人生は明るいものになるとハリエットは思わずにいられなかった。 

 
婚約から結婚までの三か月の間に、ハリエットはリオネルに恋をしたと自覚した。

リオネルの言葉で嬉しくなったり、恥ずかしくなったり。
手を握られて、肩や腰に触れられてドキドキしたり。
急用ができて会えなくなって寂しく感じたり。
女性と話しているのを見ただけで嫉妬したり。

リオネルが好きだと言ってくれる言葉に、私もあなたが好きだと返したのは少し前のこと。
そして抱きしめられて、キスをした。

ハリエットの初めてのキス。

アルバートは結婚式の誓いのキスの際、ハリエットの唇に手袋で触れて、彼は自分の指に口づけた。
その時はハリエットの紅が自分に移ることが嫌だったのだろうと潔癖なアルバートなら仕方ないと思っていたが、リーシャ以外にキスをしたくなかったのだと今になってわかった。 

ハリエットは潔癖症ではないが、アルバートがリーシャにしか触れたくないと思った気持ちが少し理解できた。

リオネルしか嫌だとハリエットも思ったから。

テイラー家で施された淑女教育には、結婚するまで恋をするなというものもあった。
親の決めた相手と結婚することになる以上、他の異性に恋をしたらつらくなるからだとわかる。

結婚するリオネルと両想いになれたハリエットは幸せである。

サルーテ伯爵はハリエットであるため、子供ができなくてもリオネルが第二夫人を娶る心配もない。 
そう思うと、姉のアイリスが第二夫人になることを嫌がったこともようやく理解できた。
夫を自分だけのものにしたいと思うことは不思議ではない。


「私って、やっぱりいろいろと、……鈍いのね。」
 

本当に、父のことをとやかく言えない。


「今から初夜だってのに考え事か?余裕だな。」

「え……?」 


余裕なんかない。
緊張を紛らわすためにあれこれ考えていただけで。

そう言う間もなく、ハリエットはリオネルに抱き上げられてベッドに寝かされた。


「今からは俺のことしか考えられなくなるぞ?覚悟はいいか?」

「……ええ。」


唇が重なり、体もリオネルと重なる。
リオネルの手が直に肌に触れていく。

それだけでおかしくなりそうだった。

お互いに何も纏っていない体で深く繋がり、リオネルを愛おしく思う気持ちが溢れそうになる。

リオネルもそう思ったのだろうか。


「愛してるよ、ハリエット。」

「私も、愛してるわ。リオネル様。」


繋がったままキスを繰り返し、触れているところが蕩けそうだった。


この初夜から数日間の蜜月でハリエットは妊娠することになる。





元ルミナス侯爵夫妻は平民として十五年の服役になった。
元侯爵は、偉そうな態度が他の囚人の気に障って暴行され、おとなしく働いているという。
元侯爵夫人は、洗濯作業中に溺死した。自殺か他殺かは不明である。

アルバートは平民として二十五年の服役となった。
潔癖すぎてすぐに倒れてしまうため、薬の治験者に回されてしまった。
薬を投与される時以外は一日中、誰とも話すことなく何もない狭い部屋で壁に向き合う苦痛が続く。

リーシャは平民の子供を跡継ぎにしようとしたため三十年の服役となった。
彼女は黙々と働いている。
実家が没落した際に足掻かず、平民として生きれば違う幸せがあっただろうと少し後悔しながら。


アルバートとリーシャの子は、リーシャの両親が引き取っているが二人がそれを知ることはない。  
刑期満了になる前に、二人はこの世を去っていたから。


サルーテ伯爵領となった元ルミナス侯爵領は、テイラー侯爵家の援助のお陰で数年後にはかつての繁栄を取り戻していた。
領民たちには笑顔が戻り、ハリエットとリオネルの子供たちも領地で過ごすことが好きだった。
弟のユリウスも子供たちの兄のように遊んでくれる。
 

リオネルは結婚前に王城での仕事を辞め、サルーテ伯爵領のために尽くしてくれている。
常にハリエットに寄り添い、二人の子供たちを愛情深く一緒に育ててくれた。


二年も閉じ込められた後にこんな幸せが待っていたなんて。

ハリエットは別邸跡地に建てられた東屋から、愛する夫と子供たちが戯れる姿を見て微笑んだ。


<終わり>

 
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