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しおりを挟む翌日の昼食時、フレージュはウィリアムと一緒に過ごしている場所へ向かった。
「ウィリアム様、お待たせしました。」
「……あぁ、フレージュか。」
ウィリアムはフレージュを見て、一瞬だけ目が泳いだ気がした。
まさか、マリエッタと一緒に来ると思っていた?
マリエッタは自分のことをウィリアムに知ってほしいと言っていたし、ウィリアムも断らなかったから、またここに来るつもりでいることはわかっている。
それでも、一緒にウィリアムのところへ行こうとフレージュが誘うのは、どう考えてもおかしい。
それに、フレージュがいないところでウィリアムとマリエッタが二人きりで過ごすわけにもいかないため、二人が話をしたいのであればフレージュもその場にいるしかないのだ。
フレージュとマリエッタを並べて比較されるようで気分はよくないが、ウィリアムが望むなら仕方がない。
婚約しているというアドバンテージがフレージュにはある。
しかし、マリエッタのことでウィリアムに対する好感度は下がってしまい、もしこのまま結婚することになってもフレージュの中に”しこり”として残るような冷めたものを心に抱いてしまった気がした。
フレージュが持参した昼食を用意していると、マリエッタがやってきた。
「お待たせしました、ウィリアム様!」
「あぁ、大丈夫だよ、マリエッタ嬢。」
フレージュの時よりもマリエッタを笑顔で迎えるウィリアムにイラッときた。
「今日もウィリアム様のために昼食を作って来ちゃいました!あ……フレージュ様も?」
「フレージュがいつも持ってくるのは料理人が作ったもので、君みたいに手作りなわけじゃないからいつでも食べられる。だから、君のをもらうよ。」
料理人が作ったもので、何が悪いの?
お菓子くらいは作ったことがあるけれど、火や包丁を使う作業はほとんどさせてもらえない。
侯爵令嬢なのだから、周りも似たり寄ったりだし。
それに、朝の忙しい時に早起きして昼食を作れ、と?
朝来る時に昼食も持参しろ、と?
自分だけじゃなく、侯爵令息が口にするものが傷んでいたらどうするの?
私のこのバスケットは、さっき受け取ったばかりの昼食よ?
マリエッタの昼食は彼女が作ったのなら、朝から持って来ていたはずで、その昼食はどこに置いてあったの?
さっき、侍女が持ってきたんじゃないの?手作りって嘘よね?
フレージュは、そう言ってやりたくなった。
しかし、もっと気になった言葉があった。
マリエッタは、今日”も”ウィリアムのために昼食を作ってきたと言ったのだ。
ということは、初めてではないということ。
一昨日の昼食時、マリエッタはここでウィリアムに告白した。
となれば、昨日しか考えられない。
ウィリアムは婚約者のフレージュ抜きで、マリエッタと二人で過ごしたということになる。
そのことに気づき、フレージュは眩暈がしそうだった。
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