婚約者をキープしたまま他の女と恋愛してみたいという男、どう思います?

しゃーりん

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婚約者だと思っていたフレージュから、三か月も前に婚約は解消していると聞いたウィリアムは慌てて家へと帰った。


「父上っ!フレージュとの婚約が解消されているって、どういうことですか?!」


父の執務室には弟のサミュエルもいた。

ウィリアムは父に睨まれ、顎でそこに座れと指示されて、ソファに座った。


「ウィリアム、なぜフレージュ嬢を蔑ろにした?私は伝えたはずだ。サットン侯爵家には助けてもらっているのだから、彼女を大切にするように、と。何が不満だったんだ?」


ウィリアムは、父がマリエッタとのことも全てを知っているのだとわかった。
婚約解消をしたのは三か月前だということは、マリエッタと会い始めてまだそんなに経たない頃のことだ。
その頃に婚約解消させられるほど自分に非があったとは思えなかった。


「不満なんて、ありませんでした。侯爵令嬢で、美人で、気立てがよくて、我が儘でもない。
でも、マリエッタに告白されて、気づいたんです。フレージュに足りないものを。」

「足りないもの?」

「ええ。俺を思う気持ちです。だから、俺はフレージュに嫉妬させようと思っただけです。
マリエッタと会い始めると、フレージュは二人きりで会うなと嫉妬心を見せ始めた。俺がマリエッタに恋するんじゃないかと不安に思ったはず。俺に会えなくなって寂しくて縋ってくるのを待っていたのに、いつまで経っても縋って来ないと思えば婚約解消?なんてことをしてくれたのですか!!」


ウィリアムがマリエッタに心を移したと思ったから、フレージュの訴えに父は同意したのだろう。
なぜ、ウィリアムに確認してくれなかったのか。
聞いてくれていれば、誤解だとわかったはずだ。今からでも遅くはない。もう一度、婚約を。
 
そう思っていたのに、父とサミュエルがウィリアムを見る目は冷たかった。
 

「愚か者が。婚約者以外の女と二人きりで会ってはいけないことは当然ではないか!
フレージュ嬢は婚約者である自分を『キープ』したまま他の女と恋愛してみたいと言ったお前に失望したんだ。それは単なる浮気と同じことだ。なぜそんなお前をフレージュ嬢が待っていなければならないのだ?」

「いや、だから、浮気とかじゃなくって、フレージュの気を引くためにしていたことで……」


別にマリエッタを好きなわけじゃない。
何が、『元子爵令嬢が侯爵夫人になっても誰も子爵令嬢だったことなんて思い出さない』だ?

そんなわけないだろう?
侯爵令嬢であるフレージュを捨てて子爵令嬢であるマリエッタを選んだとしたら、どこがよかったのかと興味深々に詮索されるだろう。

選ぶ理由がどこにあるんだ?
爵位も、顔も、性格も、何一つフレージュに勝っていないのに。

まぁ、ちょっと?積極的なところはそそられたけど。胸を押し付けてくるし。
愛人にするには我が強くて、フレージュにあることないこと吹き込んで夫婦仲を悪くさせそうだから、体の関係は持たない方がいいタイプだな、と思い、フレージュの元に戻ろうとしたところだったんだ。 

 
「お前がどう思っていようと、客観的に見ればお前のしたことは浮気でしかない。」

 
父の言葉に、これは直接フレージュと話した方が再婚約の話が進みそうだとウィリアムは思った。


 
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