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2.
2階のテラスに向かった私の前には4人の男性がいた。
王太子殿下と側近の侯爵令息はわかる。あと2人は客人のようだった。
「アミディア嬢、災難だったな。婚約解消したばかりだから誰も知らないもんな。
知っていたら、あんな言いがかりもなかっただろうに。」
「いえ、知っていたら知っていたで何か言ってきていたでしょうし。
卒業しましたので、さすがに反論しようかと思っておりましたところ、お助けいただきました。
ありがとうございます。」
「いや、最初に声をかけたのは彼だ。
隣国、ドーミー王国からの客人デニッシュ公爵令息オルビス殿だ。
奥にいるのはロール侯爵令息ジムニー殿。」
王太子殿下に名前を言われた男の一人がアミディアの前に立った。
「オルビスだ。よろしく。卒業おめでとう。婚約解消したばかりなのか?」
「あ、はい。つい先ほど。アミディア・ベーグルと申します。ありがとうございました。」
「アミディア嬢、この国では君は過ごしにくいのではないか?」
オルビスがアミディアの髪色を見ながら言った。
アミディアの髪色はプラチナ色。
この国ではおとぎ話の悪女とされている色のため、いい目では見られていない。
しかし、隣国のドーミー王国では女神の色と言われている。
「そうですね。もう疲れましたので無理やり隣国に向かおうかとも考えています。」
「無理やり?ご両親は反対なのか?」
「そうですね。会いにくくなってしまいますので。
ですが、隣国は母の出身国です。伯父や従兄もいますので。」
3年ほど行っていないけれど、何度も遊びに行ったことはある。
子供の頃から、隣国で過ごす方が楽しかった。
この国ではまるで自分が悪い魔女で、呪いでもかけると思われているのか避けられる。
髪を染めたくなったことも何度もある。
隣国ではそんな目で見られることは全くない。
珍しいけれど、他にも同じ色の人は見かけるから。伯父も従兄も同じだし。
「じゃあ、私と結婚して隣国で暮らすっていうのはどうだ?
それなら両親も認めるんじゃないか?」
いきなり結婚と言い出したオルビスに、アミディアだけでなくここにいる男性3人も驚いていた。
「婚約は解消したんだろう?
その髪色では、この国で次の縁談を探すのも難しいんじゃないか?」
確かにその通り。なので、隣国に逃げようかと考えている。
両親はずっと家にいたらいいと言うのがわかっているから。
両親は私が家で過ごすことが好きだと思っているようだけど、そういうわけではない。
外では視線が鬱陶しいから家にいるだけのこと。
本当はのびのびといろんなところで過ごしたい。
何度も隣国で暮らしたいと言ったけれど、婚約していることを理由に却下されてきた。
婚約が解消された今だからこそ、早く隣国に行きたい。
「確かにお金でも積まないと次の縁談はないと思います。
ですので、両親を説得して隣国に向かうつもりですが、別に隣国で結婚したいわけではありません。」
「だが、どうやって生活する?結婚せずに伯父の家に厄介になるのか?
それとも働きに出るのか?
いずれにせよ、ご両親が快く送り出してはくれないだろう?」
数か月、伯父のところで過ごすくらいなら送り出してくれる。
その間に両親は新たな婚約者を探して出して、私が帰国すると婚約することになるだろう。
望み望まれない相手と。
隣国で働きたいと言っても、まずどんなことが自分にできるか考えても自活できるほどの実力はない。
婚約は解消するつもりだったのだから、真剣に調べておくべきだった。
結局は、周りに頼ろうとしているだけなのに。
確かに、隣国の貴族と結婚するというのが手っ取り早い。
でもそれは伯父に探してもらえば良くて、オルビスでなければいけないことはない。
会ってすぐに求婚するだなんて怪しいし、公爵令息だというこの人がまだ結婚していないことも婚約者がいないことも怪しいし求婚に裏がありそうだと思った。
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