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結婚式まで5か月と決まったことで、アミディアは忙しくなった。
まず、ウェディングドレスの採寸とデザインを決める。
そして、お茶会や夜会用のドレスも仕立てる必要があった。
何枚かは国から持ってきているし、日常生活で過ごす服にも困っていないけれど、オルビスがプレゼントしたがるのだ。
ドレス、靴、帽子、アクセサリーなどなど、公爵家を訪れるたびに似合う物が選ばれて増えていく。
そんなオルビスと貢がれるアミディアを公爵夫人と母は嬉しそうに見ている。
結婚してから過ごすアミディアの部屋も出来上がり、オルビスが買った物がすでにたくさん詰め込まれていた。
止めることを諦めたアミディアは、受け入れることにした。
ちなみに例の王女様は、オルビスが初恋の令嬢を溺愛しているので復縁は無理だと父親に伝えられ、帰国することも離婚することも諦めたという。
今は浮気した夫を監視し、夜は子作りに協力させる毎日だという。
『自分が子供を産むまでは浮気した女の子供を認知はさせない』
どちらの国の国王からも、王女を娶りながら浮気をしたことを叱責されたという夫は、ひたすら王女との子作りに励む道しか残されていないという。
アミディアは気づいた。
オルビスが両親に言った話、私に言った話、広めた噂の内容、それぞれに嘘と真実が混じっている。
いろんな嘘と真実を交えたオルビスの話でわかったことは、彼の目的はアミディアを手に入れることで間違いなく、アミディアに執着しているということ。
オルビスはアミディアが逃げない限り、愛し大切にしてくれる。
逃げても捕まって監禁されそうだし?
まぁ、もう怪しい人だとは思っていないから逃げるつもりもないけれど。
でも、彼の愛情表現はまだ私には少し重い。
信じられないことに、2人きりでなくても平気で抱きしめてくるし額や頬にキスもする。
肩や腰を抱いて座るのは当たり前だし、2人きりだと膝に乗せられたり後ろから抱きしめてくるのは当然。
もちろん、『好きだ』『愛してる』と惜しみなく伝えてくれる。
恥ずかしくて逃げたくなっていたけれど、言われたことに納得した。
『結婚すれば初夜がある。閨事は裸だぞ?こうして触れ合っていれば慣れるだろう?』
そうだった。閨教育も受けた。夫婦の営みはおそらく想像以上に恥ずかしいことばかり。
この程度で恥ずかしがっていたら、初夜でオルビスが困ってしまうだろう。
それに気づき、イチャイチャに慣れてきたら触れ合っていないと寂しく思うようになった。
珍しくオルビスがアミディアに触れないので思わず自分からオルビスの手を握った時、彼はニヤッと笑った。
アミディアがそうすることを期待していたとわかった。やられたと思った。
だけど、そのあと本当に嬉しそうな顔で抱きしめてきたので、思わず『好き』と言った。
アミディアが自発的にオルビスに『好き』と言ったのは初めてだった。
オルビスはアミディアにいつも返事を求めなかった。
求婚が唐突で強引だったし、ずっと一緒に過ごしていくうちにいつかは好きになってくれるだろうとオルビスは気長に考えていたのだ。
「結婚までに聞けるとは思ってなかったから嬉しいよ。」
「口説くって自信満々だったのに?」
「アミディアは慎重だからな。私の言葉を一つひとつ疑うと時間がかかるかなって。
いつまででも待てたけど、嬉しいなぁ、これは。」
オルビスは本当に喜んでくれている。それがわかった。
おそらく、アミディアが想像している以上にオルビスの想いは深いのかもしれない。
自分のどこが気に入られたのかはサッパリわからないけれど。
好きな人に好きになってもらえることは幸せなことだと思う。
アミディアもちゃんと口に出してオルビスに伝えていこうと思った。
結婚式までもう少し。
自国を去りたかったために受けた怪しい求婚は、愛し愛されるとても幸せな未来が待ち受けていた。
<終わり>
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