代理で子を産む彼女の願いごと

しゃーりん

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前の婚約者のことは、あまり興味がなかった。
高位貴族令嬢にもかかわらず、男に媚びを売っているように見えたからだ。 
俺が相手にしないせいか、他の男に泣きついて優しくしてもらう姿を見たこともあった。
まさか、不貞をするほど愚かな女だとは思っていなかったが…

婚約破棄の原因となった夜会は、俺が体調不良のために行けなかったが彼女は参加した。
経緯はわからないが、廊下で待機する使用人の話では男二人と休憩室に入ったらしい。
途中、男が一人出てきて扉が開いたとき、いかにも行為の最中だという声が聞こえたそうだ。
その男が部屋に戻ると、しばらくして違う男が出てきた。その時も行為の最中のようだったらしい。
その使用人は、二人を相手にする令嬢は初めてでびっくりした。 
別の休憩室から声がかかり、他の使用人に取りに行くものを伝えるために少しの間、廊下から離れた。
戻ると男がその部屋から出てきて使用中から清掃の印に変えた。
廊下を離れた少しの間に令嬢も出て行ったのだと思い、使用人は部屋の清掃を依頼しようとひとまず中の様子を確認することにした。ベッドを使用したとは思うが、どの程度の清掃が必要であるか…
すると、ベッドの上で全裸の令嬢が股を広げた格好で秘部からは白濁したものを垂れ流したまま眠っていた。
使用人はいないはずの人がいて驚いたが、あられもない格好の令嬢に近寄ることもできず、部屋を出た。
通りかかった使用人に侍女長か誰か上の女性を連れて来るように頼み、部屋の前にいた。 
やってきた侍女長と侍女に中の様子を説明した。
慌てて中に入った侍女長たちは、今度は夜会主催の侯爵夫妻を呼びに行った。
事情を説明するために応接室に呼ばれた使用人は、知っていることを全部話した。
何度も、『無理矢理連れ込まれた様子はなかったか』『嫌がる声や泣き声は聞こえなかったか』と確認されたが、喜んでいたとしか答えようがなかった。男二人も見覚えがないと言った。

目覚めた令嬢は、言い逃れをしようとした。飲み物に媚薬でも入っていたに違いないと。
相手の男が誰かも覚えていない。酔っていたのでは?と思われたが、なかったことには出来ない。
令嬢の両親にも伝わり、クロードにも伝わり婚約破棄となった。
後日、令嬢の初めての相手はよく泣きついていた学園の男だとわかった。

開き直った令嬢は、男二人にチヤホヤされて嬉しかったと言った。
経験があることを聞き出されてしまい、一人の男が『女性を喜ばせる自信がある』と言った。
もう一人の男は『太くて長いのが自慢』と言った。
いろんな男を知るともっと綺麗になる。どちらが好みか判断してほしいと言われ、二人に抱かれることしか考えられなくなった。夢中で求めたことは覚えているらしい。

令嬢の両親は修道院に行かせるつもりだった。しかし、令嬢は嫌がった。『後妻の方がいい』と。
ある辺境伯が部下の後妻にと言った。今後、実家との連絡は不可が条件だ。
よく知りもせずに嫁いだ令嬢は、嫁いだ直後から娼婦のような仕事をさせられていた。
隣国との接待で女性を求められる時、娼婦ほど手垢がついているわけではなく、しかも元令嬢である。
結婚していて他人の夫人であることも気分が高揚するらしい。
隣国は性に奔放な国柄であるため、批判はできない。
侍女やメイドに手を出されては困るため、部下の妻という名目のそういった女を何人か置いている。
令嬢も始めは戸惑ったが、楽しみだしていたらしい。
しかし、暇なときに手を出した騎士の一人に夢中になった。
騎士は、金を払わずに相手をしてくれる女だと思っていただけだ。
女には辺境伯から選択肢を与えられた。
普通の娼婦として娼館で働くか、辺境の騎士を相手することを禁じ他国の接待のみでこのまま部下の妻という立場でいるか。
女は娼館を選んだ。夢中になった騎士が来るかもしれないからだ。
愚かな女だ。たとえ騎士が娼館を利用しても相手になることはないだろう。
今でも健気に騎士が来るのを待っているのだろうか?…ないな、それは。






 
 
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