代理で子を産む彼女の願いごと

しゃーりん

文字の大きさ
21 / 43

21.

しおりを挟む
 
 
カシュー伯爵家の家宅捜索と使用人の聴取がすぐさま始められた。
ショコルテ公爵は騎士団長と共にセスを尋問することにした。

セスという部下は、8年前に伯爵と会話をしていた人物だ。当時のフィルリナが名を言っていた。
前伯爵の事故に見せかけた殺人、フィルリナを売るはずだった人物、アリシアを売るはずだった人物を知っているはずで、この3点を重点的に聞き出すことになっていた。 
 
「あの事故はねぇ、一緒に死んだ御者のせいですよ。
 馬を驚かせて崖下へ落ちる。その手筈が、逃げ遅れて自分も一緒に崖下へ落ちたんです。
 思惑通り、伯爵夫妻は亡くなり、死んだ御者への金も払わずに済んだ。ということです。
 
 そそのかしたのは、アリシアを売るつもりだったテニッシュ伯爵です。
 真面目な兄より愚鈍な弟と仲良くしたかったようですよ?アリシアを得るために。
 アリシアを囲う家をカシュー伯爵領に用意させていましたからね。
 王都とテニッシュ領との間にあるんですよ。カシュー領の家は。
 ひょっとしたら、アリシアだけでなくて、他の子も買って置いておく家だったかもね。
 幼女が好きなようだった。匿う所がまず必要だったんだね。
 アリシアが逃げて激怒してたけど、そのあとすぐに死んだってね。
 他の子を攫おうとしてバレて殺されたってことはない?…ないか。

 フィルリナを売るつもりだったのはナフィン侯爵です。珍しい髪色に惹かれたらしいね。
 父親の前侯爵の影響らしいよ?珍しいものが好きになったのは。
 いろいろ集めてるみたいだ。収集用の家があるんじゃない?
 フィルリナが逃げて残念がっていたよ。見つけたら知らせてくれって。
 
 で、今回見つかったけど、別人に成りすましているようだって侯爵に言ったんだ。
 セラフィーネの名を言ったら、笑い出した。
 彼女は死んだって聞いた。だから、フィルリナが成りすましているのは本当だろうって。
 でも子供を産んでいるって知ってフィルリナへの興味が薄れたようだった。
 そこで伯爵が13歳のアリシアという妹も同じ髪色だからどうか?って勧めたんだ。
 侯爵はアリシアを買うと言ったよ。
 ひとまずフィルリナを取り戻してからアリシアもって計画だったけど、捕まっちゃったね。」


…セスは単なる部下だ。指示されたように動いただけだろうと思い、素直に話せば刑期も考慮してやると言えば、ペラペラとよくしゃべる。

「侯爵はセラフィーネは死んだって『聞いた』側なんだな。言った人物は誰なんだろうな?」

「さあ?珍しいもの好きだった父親じゃない?」

確かに王弟の娘が死んでいるだなんて迂闊に他人に話す馬鹿はいないか?
趣味が合う親子ならあり得るか…

「ナフィン侯爵はどういう経緯でフィルリナを買うことになったんだ?」

「葬儀に来たんだ。そこでフィルリナのことを聞かれた。歳とか婚約者はいるかとか。
 だから、息子の婚約者にでもしたいのかと思った。
 でも話しているうちに珍しい髪色に惹かれたって言ったんだ。
 あまりにジッと見てるんで、冗談っぽく『買います?』って聞いたんだ。
 すると金額を提示された。ってわけ。
 で、伯爵に言ったら決まったんだ。」

「…お前が売ったようなもんじゃないか。」

「あ……そうかも?」

このセスという男は軽いな。頭も口も。深く考えないところが伯爵と気が合ったか? 

「カシュー伯爵は他に何か悪事に加担はしていないか?」

「意外と小心者なんだよ、伯爵は。案を出されるとソノ気になっちゃうけどね。」

そうだろうな。言われたことに従うのは使用人だ。あの男は領主には向いてない。




 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

大人になったオフェーリア。

ぽんぽこ狸
恋愛
 婚約者のジラルドのそばには王女であるベアトリーチェがおり、彼女は慈愛に満ちた表情で下腹部を撫でている。  生まれてくる子供の為にも婚約解消をとオフェーリアは言われるが、納得がいかない。  けれどもそれどころではないだろう、こうなってしまった以上は、婚約解消はやむなしだ。  それ以上に重要なことは、ジラルドの実家であるレピード公爵家とオフェーリアの実家はたくさんの共同事業を行っていて、今それがおじゃんになれば、オフェーリアには補えないほどの損失を生むことになる。  その点についてすぐに確認すると、そういう所がジラルドに見離される原因になったのだとベアトリーチェは怒鳴りだしてオフェーリアに掴みかかってきた。 その尋常では無い様子に泣き寝入りすることになったオフェーリアだったが、父と母が設定したお見合いで彼女の騎士をしていたヴァレントと出会い、とある復讐の方法を思いついたのだった。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。 無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。 彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。 ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。 居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。 こんな旦那様、いりません! 誰か、私の旦那様を貰って下さい……。

辺境伯と幼妻の秘め事

睡眠不足
恋愛
 父に虐げられていた23歳下のジュリアを守るため、形だけ娶った辺境伯のニコラス。それから5年近くが経過し、ジュリアは美しい女性に成長した。そんなある日、ニコラスはジュリアから本当の妻にしてほしいと迫られる。  途中まで書いていた話のストックが無くなったので、本来書きたかったヒロインが成長した後の話であるこちらを上げさせてもらいます。 *元の話を読まなくても全く問題ありません。 *15歳で成人となる世界です。 *異世界な上にヒーローは人外の血を引いています。 *なかなか本番にいきません

唯一の味方だった婚約者に裏切られ失意の底で顔も知らぬ相手に身を任せた結果溺愛されました

ララ
恋愛
侯爵家の嫡女として生まれた私は恵まれていた。優しい両親や信頼できる使用人、領民たちに囲まれて。 けれどその幸せは唐突に終わる。 両親が死んでから何もかもが変わってしまった。 叔父を名乗る家族に騙され、奪われた。 今では使用人以下の生活を強いられている。そんな中で唯一の味方だった婚約者にまで裏切られる。 どうして?ーーどうしてこんなことに‥‥?? もう嫌ーー

処理中です...