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しおりを挟む仮面とマントは近くの植え込みで見つかった。しかし、髪は見つからなかった。
ナフィン侯爵は来ていたが、騎士団長たちが探していた頃は既に帰った後だった。
しかし、急遽行った手荷物検査には応じたらしいが引っ掛からなかったという。
事件直後に帰ったが、髪は持っていなかった。ということだ。
まだ王城のどこかにある?誰かに頼んだ?
あまりうろつく時間もなかったはずだ。
「ここにいても仕方がない。マントを借りたからフードを被って帰ろう。」
フィルリナは、今日はショコルテ公爵邸に泊まるそうだ。アリシアも一緒だ。
そばにいたいところだが、その資格がないのが悔しい。
「フィー、また連絡する。気をつけて。」
抱きしめて額に口づけて別れた。周りに誰がいようが知るか!
「髪が目的だった。何が考えられるかな?」
帰りの馬車で両親に聞いてみる。
「普通はカツラね。でも、フィーちゃんの髪だから…ナフィン家よねぇ。」
「傷つけたり攫ったりする気はなかったということは、父親たちとは違う?」
「そうね。口調も荒々しくもなかったし。最後、『髪はまた伸びる』って言ったわ。」
「だから、くれってことか?ふざけてるな…」
父がボソッと言う。
「何で夜会で狙ったんだ?警備に捕まる可能性もある。」
そうだ。人も多い。でも見つからずにやり遂げた。
翌朝、母が思いついたように言った。
「ドレスよ!夜会のドレスは普段着やお茶会よりも膨らんでいるわ。
髪を縛って袋に入れて、下着か何かに括り付けると外からは見えないんじゃないかしら?」
「っということは、同伴者が共犯?夫人だよな?多分。」
「騎士団長に言いに行こう。」
その頃、フィルリナも同じ結論に達していたようだ。
騎士団長を訪れた時、ちょうど公爵も来ていた。
「ドレスの中とは我々男にはあまり思いつかない発想ですね。」
「どんな感じの夫人でした?
公爵と騎士団長はナフィン侯爵邸で会ってるんですよね?」
「いや、親の所業を説明に行ったときには会っていないんだ。
今まだ23歳くらいだったか?
騎士団の中にナフィン侯爵と夫人の元クラスメイトとかいないか?」
騎士団長が探しに行き、関係ないクロードも父と仕方なしに部屋を出た。
しばらくして、騎士団長は一人の男を連れて戻ってきた。
「ナフィン侯爵のことですか?彼は密かに女性にモテてましたね。
おそらく何人かは相手してたんじゃないかな?
婚約者だったクララ夫人は大人しい控え目な感じの子でしたね。
仲が良かった令嬢が行方不明になっちゃって、落ち込んでいたなぁ。
それから更に大人しくなっちゃったかな。って思いました。」
「…行方不明?いつ頃の話だ?」
「6年くらい前ですかね?その令嬢とひとつ下の学年の令嬢がいなくなりました。」
「俺が騎士団長になる前、そんな事件があったな。
親には友人とお茶すると言って、実際は約束していなかった。
恋人がいたとか騙されて売られたとか噂がいろいろあったんだ。」
「話を戻すが、ナフィン侯爵とクララ夫人の仲はどう見えた?」
「良くも悪くもない感じでしょうか?会話をしないわけでもない。
でも、イチャイチャしたりとかはないし。
ナフィン侯爵が言うことに、クララ夫人が答える。
恋愛じゃなく政略なんだなって感じでしたかね?」
「クララ夫人は、ナフィン侯爵の遊び相手から嫌がらせとかなかったのか?」
「目に見えるところで彼が他の令嬢と会っていることはなかったですね。
だから、クララ夫人も知らなかったんじゃないかな?
逢引しやすい場所って学園内で何か所かあって、男の方がよく知ってるんですよ。
そこから時間差で出てくる男女っていかにもって感じなんです。
ナフィン侯爵は秘密を守れる令嬢だけ相手したんだと思います。」
「クララ夫人はナフィン侯爵に忠実だと思うか?」
「そうですね。拒否しそうな感じではないですかね。だから彼には良かったのかも。」
「不貞がバレても文句を言わない?」
「そうです。」
話をしてくれた騎士を仕事に戻らせた。
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