男女の友人関係は成立する?……無理です。

しゃーりん

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結局、マチルダの計画は本人の浅知恵のようなものということらしい。

マチルダの父は、学園で金持ちを掴まえてくれれば楽になるが、そんなにうまく相手が見つかるはずがないとわかっている。
グレッグの父との関係もあるし、向こうが借金でも背負えば婚約解消を言い出せるがそこまででもない。
商人や後妻になれそうな金持ちの貴族を探しても都合よく見つかりもしないし、マチルダを見初めてもらえなければ意味がない。

マチルダは割と本気でグレッグから違う男に乗り換えたいと思っているが、最初にロベルトに目をつけた時点で間違いだったのだ。
ローゼマリーの誕生日パーティーでロベルトに嵌められたことをマチルダ本人は未だに気づいていない。 
マチルダが狙いそうな裕福な高位貴族は誰も彼女を相手にすることはないということも。
 
グレッグはマチルダに引き込まれてその気になったが、実はあまり深く考えていない。
うまくいけばローゼマリーが手に入るとマチルダに言われ、性的な目で見ずに好青年を演じろと指示されていたようだ。


「グレッグをキープしたままっていうマチルダの考えが、一番気に入らないかな。」


ロベルトがそう言った。


「確かにな。マチルダとグレッグがお互いに納得していれば、慰謝料のない婚約解消をして新たな相手を探せばよかったんだ。」


兄がそう言った。


「マチルダはグレッグよりも自分の方が不利だとわかっていたのだろう。」


父がそう言った。
 
グレッグは伯爵家の嫡男であるため、下位貴族の中でも裕福な令嬢を選べるかもしれない。

逆にマチルダはグレッグよりも金のある男を見つけられても爵位は下がるかもしれない。 
でも、見つかるかどうかもわからないため、グレッグをキープしたままじゃないと不安だったのだ。

確かにずるい。 

グレッグと力を合わせて領地を盛り立てる方法を考えた方が有意義に思える。
 
ともあれ、ローズマリーは自分の落ち度をロベルトが躱してくれ、家族にも迷惑をかけたけれど、結局は何もまだ実行されなくてよかったとホッとしていた。


ここで、一言も話していなかった母が言った。


「取り返しのつかない事態にならなくて助かったわ。ありがとう、ロベルト。」

「いえ、あまり被害がなく収拾できて一安心です。」

「そうね。未然に防げることが大事だわ。……お茶の入れ替えを頼んで私は下がらせてもらうわね。」


母はそう言って、父の手を握り締めた後、部屋を出て行った。


「お父様?まだお話が?」


お茶を入れ替えて、まだ続きを?


「ちょうどいい機会だからね。お前たちに昔話をしようと思うんだ。」

「昔話?」

「ああ。私とフルールが結婚することになった経緯を。今回とは少し違うけれど、同じような男女の友人関係で貴族の地位まで失うことになった男女の話を、ね。」


両親の結婚の経緯。
それはいつも『私がフルールを愛したからだ』としか父は言わなかった。
 
詳しく語られたことは一度もなかった。


 
 
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