男女の友人関係は成立する?……無理です。

しゃーりん

文字の大きさ
27 / 62

27.

しおりを挟む
 
 
ヴィクトルとロベルトはローゼマリーが来る庭の方へと歩きながら話をしていた。
 

「ロベルトはさ、父がどの時点で母を好きになったと思う?」

「え?最初からでしょう?」


やっぱりそうか。ローゼマリーなら、同情で世話をしている間に愛情が芽生えたと思っただろう。


「お義父上の性格を考えると、婚約者同士で仲良しこよしだなんて有り得ないでしょう。
お義母上とはお互いに跡継ぎ同士。結婚はリンジーベルとすることになっても、お互いに子供を設ければ、リンジーベルもスタッドも不要になる。どの道、不貞で離婚に追い込んでいたんじゃないですか?子供ができた後はリンジーベルを放置して抱かなければ、彼女ならスタッドを誘ったでしょうし。」


兄妹のような従兄妹だった二人は一番不貞を疑われにくい。
そして立場を失いたくない二人は互いが絶好の不貞相手となっていただろう。


「そして、父は離婚した母を慰めて、体の関係に持ち込む?虎視眈々とその日を狙う恐ろしい友人だな。」


そうだ。父は初めから母を友人とは見ていなかった。
実家の跡継ぎの座など、母のそばにいるためには邪魔なくらいに思っていたのだろう。
たとえ自分の子がいようと、母のために婿に来ていたのは変わらなかったかもしれない。

しかし幸運にも、結婚前に浮気現場に遭遇することができた。
そのお陰で、真っ新な母を手に入れることができた父の執着は20年が過ぎても変わらない。

母がどの時点で父の思いに気づいていたかはわからないが、今となってはもう、全てを受け入れているということはわかる。 


「ロベルト、お前は初めからローゼマリーが婚約者でよかったな?」

「はい。大丈夫ですよ。どんな輩からも必ず守りますから。」 


ロベルトも父と同じく、自己犠牲精神があると思う。
マチルダとのことも、浮気を疑われることも厭わず、それでいてローゼマリーに罪悪感を抱かせた。

ちょっと暴走しがちなローゼマリーを、前もって止めることはせずに後でわからせる。
少し、妹で遊んでいるというか、手のひらで転がしているというか、そんなところがある。
 
父は自分と似たロベルトを早くから見抜いてローゼマリーの婚約者にした。
ローゼマリーの淑女教育がイマイチで終わったのも、両親やロベルトが口うるさく言わなかったからだし、同年代の令嬢と比較される機会、我が身を顧みる機会がほとんど与えられなかったからだ。

少し不憫にも思えるが、聡い母とは違って妹ローゼマリーは気づかない方が幸せだ。  
たとえいつか気づいても、その時はすでにロベルトの深い愛に埋もれていることだろう。

この将来の義弟がいれば、妹はあまり穢れなく純粋なままで幸せに暮らせると確信している。 


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男装の騎士に心を奪われる予定の婚約者がいる私の憂鬱

恋愛
私は10歳の時にファンタジー小説のライバル令嬢だと気付いた。 婚約者の王太子殿下は男装の騎士に心を奪われ私との婚約を解消する予定だ。 前世も辛い失恋経験のある私は自信が無いから王太子から逃げたい。 だって、二人のラブラブなんて想像するのも辛いもの。 私は今世も勉強を頑張ります。だって知識は裏切らないから。 傷付くのが怖くて臆病なヒロインが、傷付く前にヒーローを避けようと頑張る物語です。 王道ありがちストーリー。ご都合主義満載。 ハッピーエンドは確実です。 ※ヒーローはヒロインを振り向かせようと一生懸命なのですが、悲しいことに避けられてしまいます。

婚約破棄でみんな幸せ!~嫌われ令嬢の円満婚約解消術~

春野こもも
恋愛
わたくしの名前はエルザ=フォーゲル、16才でございます。 6才の時に初めて顔をあわせた婚約者のレオンハルト殿下に「こんな醜女と結婚するなんて嫌だ! 僕は大きくなったら好きな人と結婚したい!」と言われてしまいました。そんな殿下に憤慨する家族と使用人。 14歳の春、学園に転入してきた男爵令嬢と2人で、人目もはばからず仲良く歩くレオンハルト殿下。再び憤慨するわたくしの愛する家族や使用人の心の安寧のために、エルザは円満な婚約解消を目指します。そのために作成したのは「婚約破棄承諾書」。殿下と男爵令嬢、お二人に愛を育んでいただくためにも、後はレオンハルト殿下の署名さえいただければみんな幸せ婚約破棄が成立します! 前編・後編の全2話です。残酷描写は保険です。 【小説家になろうデイリーランキング1位いただきました――2019/6/17】

【完】まさかの婚約破棄はあなたの心の声が聞こえたから

えとう蜜夏
恋愛
伯爵令嬢のマーシャはある日不思議なネックレスを手に入れた。それは相手の心が聞こえるという品で、そんなことを信じるつもりは無かった。それに相手とは家同士の婚約だけどお互いに仲も良く、上手くいっていると思っていたつもりだったのに……。よくある婚約破棄のお話です。 ※他サイトに自立も掲載しております 21.5.25ホットランキング入りありがとうございました( ´ ▽ ` )ノ  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

正妻の座を奪い取った公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹のソフィアは姉から婚約者を奪うことに成功した。もう一つのサイドストーリー。

お姉様のお下がりはもう結構です。

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
侯爵令嬢であるシャーロットには、双子の姉がいた。 慎ましやかなシャーロットとは違い、姉のアンジェリカは気に入ったモノは手に入れないと気が済まない強欲な性格の持ち主。気に入った男は家に囲い込み、毎日のように遊び呆けていた。 「王子と婚約したし、飼っていた男たちはもう要らないわ。だからシャーロットに譲ってあげる」 ある日シャーロットは、姉が屋敷で囲っていた四人の男たちを預かることになってしまう。 幼い頃から姉のお下がりをばかり受け取っていたシャーロットも、今回ばかりは怒りをあらわにする。 「お姉様、これはあんまりです!」 「これからわたくしは殿下の妻になるのよ? お古相手に構ってなんかいられないわよ」 ただでさえ今の侯爵家は経営難で家計は火の車。当主である父は姉を溺愛していて話を聞かず、シャーロットの味方になってくれる人間はいない。 しかも譲られた男たちの中にはシャーロットが一目惚れした人物もいて……。 「お前には従うが、心まで許すつもりはない」 しかしその人物であるリオンは家族を人質に取られ、侯爵家の一員であるシャーロットに激しい嫌悪感を示す。 だが姉とは正反対に真面目な彼女の生き方を見て、リオンの態度は次第に軟化していき……? 表紙:ノーコピーライトガール様より

婚約解消は君の方から

みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。 しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。 私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、 嫌がらせをやめるよう呼び出したのに…… どうしてこうなったんだろう? 2020.2.17より、カレンの話を始めました。 小説家になろうさんにも掲載しています。

私が、良いと言ってくれるので結婚します

あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。 しかし、その事を良く思わないクリスが・・。

ヒロインが私の婚約者を攻略しようと狙ってきますが、彼は私を溺愛しているためフラグをことごとく叩き破ります

奏音 美都
恋愛
 ナルノニア公爵の爵士であるライアン様は、幼い頃に契りを交わした私のご婚約者です。整った容姿で、利発で、勇ましくありながらもお優しいライアン様を、私はご婚約者として紹介されたその日から好きになり、ずっとお慕いし、彼の妻として恥ずかしくないよう精進してまいりました。  そんなライアン様に大切にされ、お隣を歩き、会話を交わす幸せに満ちた日々。  それが、転入生の登場により、嵐の予感がしたのでした。

処理中です...