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しおりを挟むヴィクトルとロベルトはローゼマリーが来る庭の方へと歩きながら話をしていた。
「ロベルトはさ、父がどの時点で母を好きになったと思う?」
「え?最初からでしょう?」
やっぱりそうか。ローゼマリーなら、同情で世話をしている間に愛情が芽生えたと思っただろう。
「お義父上の性格を考えると、婚約者同士で仲良しこよしだなんて有り得ないでしょう。
お義母上とはお互いに跡継ぎ同士。結婚はリンジーベルとすることになっても、お互いに子供を設ければ、リンジーベルもスタッドも不要になる。どの道、不貞で離婚に追い込んでいたんじゃないですか?子供ができた後はリンジーベルを放置して抱かなければ、彼女ならスタッドを誘ったでしょうし。」
兄妹のような従兄妹だった二人は一番不貞を疑われにくい。
そして立場を失いたくない二人は互いが絶好の不貞相手となっていただろう。
「そして、父は離婚した母を慰めて、体の関係に持ち込む?虎視眈々とその日を狙う恐ろしい友人だな。」
そうだ。父は初めから母を友人とは見ていなかった。
実家の跡継ぎの座など、母のそばにいるためには邪魔なくらいに思っていたのだろう。
たとえ自分の子がいようと、母のために婿に来ていたのは変わらなかったかもしれない。
しかし幸運にも、結婚前に浮気現場に遭遇することができた。
そのお陰で、真っ新な母を手に入れることができた父の執着は20年が過ぎても変わらない。
母がどの時点で父の思いに気づいていたかはわからないが、今となってはもう、全てを受け入れているということはわかる。
「ロベルト、お前は初めからローゼマリーが婚約者でよかったな?」
「はい。大丈夫ですよ。どんな輩からも必ず守りますから。」
ロベルトも父と同じく、自己犠牲精神があると思う。
マチルダとのことも、浮気を疑われることも厭わず、それでいてローゼマリーに罪悪感を抱かせた。
ちょっと暴走しがちなローゼマリーを、前もって止めることはせずに後でわからせる。
少し、妹で遊んでいるというか、手のひらで転がしているというか、そんなところがある。
父は自分と似たロベルトを早くから見抜いてローゼマリーの婚約者にした。
ローゼマリーの淑女教育がイマイチで終わったのも、両親やロベルトが口うるさく言わなかったからだし、同年代の令嬢と比較される機会、我が身を顧みる機会がほとんど与えられなかったからだ。
少し不憫にも思えるが、聡い母とは違って妹ローゼマリーは気づかない方が幸せだ。
たとえいつか気づいても、その時はすでにロベルトの深い愛に埋もれていることだろう。
この将来の義弟がいれば、妹はあまり穢れなく純粋なままで幸せに暮らせると確信している。
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