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しおりを挟むナディア様は、夫から何となく聞いた話で、夫も又聞きでどこまでが本当かはわからない話だという、アイリーンさんの話を教えてくれた。
「アイリーンにはお兄さんがいてね、騎士だったらしいわ。十年くらい前に新人だったそうなのだけど、同じ隊の騎士の妻だか婚約者かが本気で好きになってしまったの。そして隊内でひどい虐めにあったらしいわ。
そして、新人なのに無理矢理、騎士の大会に出場させられて、虐めている騎士と対決するように仕組んで、殺されたの。」
過去の騎士の大会で、私怨で殺されたのはアイリーンさんのお兄さんだったらしい。
今の話では、アイリーンさんのお兄さんは何も悪くないように思える。
女性が勝手に好きになっただけなのに。
「だから、アイリーンが女騎士として入隊してきて、扱いに困ってたそうなの。でも、彼女は騎士として真面目に仕事をしていたらしいわ。だけど、ちょっと事件に巻き込まれたらしくて……」
婦女暴行組織を調査していた時に、女であるアイリーンは外されそうになった。
しかし、自分が囮になると強引に動いたらしい。
予想外の動きに騎士たちはアイリーンを見失い、どうにか見つけた時には襲われる寸前だった。
「襲われる寸前だったことになっているけれど、実際は襲われた後だったんじゃないかと言っていた騎士もいたそうよ。その辺の詳しいことは上層部しか正確には知らないのでしょうね。」
ナディア様の夫、イーサン様も四年目の騎士なので、当時のことは知らないのだろう。
今の第三部隊の何人が、アイリーンさんの被害を知っているのかはわからないけれど、何となく、同じ部隊の騎士には事情を聞かせているということらしい。
ということは、ブレイズも聞いていることになる。
「アイリーンが酔うとキスをするようになったのもその頃からだそうよ。一時は男漁りもしていたらしいけど、本当かどうかは夫も見たことがないらしいから。」
だから、ブレイズを生け贄にすることを許せ、と?
なんだか腑に落ちない。
怖い目にあったことは気の毒だと思う。
しかし、婦女暴行事件なのだからアイリーンさんを外そうとしたのに、囮になると動いたのは本人。
それなのに、そこまでアイリーンさんに気を遣い、咎めないのは何故?
例えば、犯罪者を現行犯で厳しい処分にするために、アイリーンさんが暴行されるのを待っていたとか?
騎士団は、わざと、未遂にしなかった?
すでに、お兄さんの件で気を遣われていたアイリーンさんに、辞めてもらいたかったから。
なのに、彼女は辞めずに、更に腫れ物扱いしなければならなくなった、とか。
……何が理由にせよ、メルリーが納得しなければならない理由にはならないと思う。
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