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しおりを挟む部屋から必要最小限の物を鞄に詰めて、ブレイズは家を後にした。
メルリーとの思い出の場所を、最後に穢してしまった気がした。
本当に、自分はろくでもない男だとブレイズは自嘲した。
仕事には少し遅刻したが、ひとまずそのまま任務についた。
しかし、昼休憩時に第三部隊長から呼び出しを受けた。
「本日は遅刻をしてしまい、申し訳ございませんでした。」
「あ、いや、それもあるが、呼び出したのは別件だ。」
別件?離婚したことがすでに知られているのか?
まぁ、ちょうどいい。宿舎に入りたいと申請しなければ寝る場所がないのだ。
「遅刻は奥さんの具合が悪かったのか?
妻が、本当に申し訳ないことをした。もっと早く知らなければならなかったのに。」
部隊長の妻?
お茶会の噂話のことか?
「いえ、もう済んだことです。妻とは昨日離婚いたしました。」
離婚の原因が部隊長の妻にあるわけではないので、謝られる意味がわからない。
「は……?離婚?お前、流産したばかりの奥さんを捨てたのか?」
流産……?え…………?
「お前、ひょっとして奥さんが妊娠していたことも流産したことも聞かされないまま離婚したのか?」
ブレイズがよほど驚いた顔をしていたのだろう。
部隊長もそのことに驚きながら聞いてきた。
「知りませんでした……。」
頭がグラグラしていた。
急に、浮気を問い詰められるようになったのは、またあのお茶会のせいかと思っていた。
思い返せば、いつものメルリーとは違っていた。
どうしたんだ?何があった?大丈夫か?
そんな言葉をかけてやることさえ、今までもしてこなかった。
自分のことばかりだった。
「……そこに座れ。」
腕を取られ、ソファに座り込んだ。
部隊長は話を続けた。
「私も、ある騎士から聞かされるまで知らなかった。
先日のお茶会で、お前の奥さんは妻たちにお前の浮気の話を面白おかしく聞かされたそうだ。
帰りたい様子だったのに、無理に引き留めて話した後、奥さんは倒れた。
服の臀部に……血が広がって、慌てて我が家の医師を呼んだらしい。
その場にいた夫人たちも流産ではないかと気づいたが、どうなったか結果を聞く機会がなかった。
罪悪感のあった夫人が夫に話し、その者が私に伝えてきた。
私は屋敷の使用人や医師、妻からも聴取し、お前の奥さんがずっと笑い者にされ続けていたことを知った。
最初のきっかけになった理由を知っているか?」
理由……一つしか思いつかない。
「俺と、アイリーンのことですか?」
「そうだ。上官として情けないことだが、私は親睦会でのお前たちのキスのことを知らなかった。」
第三部隊長は、親睦会でいつも最初の一杯で帰るか、不参加で飲み代を提供してくれるかだった。
子供たちが起きているうちに帰りたい。
伯爵でもある部隊長は、家族との時間を大切にしていた。
そんな部隊長に、アイリーンの醜態を教える騎士は誰もいなかったのだ。
「お前は結婚後も、アイリーンを拒絶しなかったそうだな。しかも、奥さんに知られた後も。」
「……はい。」
「騎士団も悪い。しかし、お前の道徳観にも問題がある。」
「……はい。」
「浮気は事実か?」
「……最後までは、していません。……でした。」
昨夜は最後までした。してしまった。離婚後だから厳密には浮気ではないが、浮気した気分だ。
「どういうことだ?噂ではアイリーンの部屋に入ったんだろう?」
「あの日は、指、で。最後までしたのは、昨晩、で。」
部隊長は、呆れたようなため息をついた。
遅刻した原因が妻の看病ではなく、女との一夜のせいだからだ。
離婚したその日にアイリーンを抱いたのだから、そういう予定だったと思われても仕方がない。
まるで、アイリーンを抱きたいから、メルリーと離婚したかのようだ。
待ちわびていたから、寝過ごすほど濃厚な夜を過ごしたのだと思われただろう。
「では、アイリーンが窓から叫んだという内容は、あながち嘘とも言い切れないのか。」
窓から叫んだ内容?
そう言えば、手を振りながら何か言っていたが、耳に入ってこなかった気がする。
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