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しおりを挟むブレイズは、アイリーンが窓から叫んだというその内容が噂の発端なのだと気づいた。
「アイリーンは、何と言っていたのですか?」
「お前、自分が言われたのに覚えていないのか?」
「あの時、窓を開けてアイリーンが何かを言っていたのは知っていますが、早く帰ろうと焦っていたので耳に入ってこなかったのです。」
部隊長は再び呆れたようにため息をついた。
「アイリーンは、『すごく気持ちよかった。今度は泊まって朝まで抱いてくれ。』と言ったらしい。」
ブレイズは項垂れた。
その言葉では、関係を持ったと誰もが思うだろう。
それを聞かされて、メルリーは倒れた。
……流産したのだ。
メルリーが何度も浮気したのだろうと聞いてきたのも当然のことだ。
「お前は浮気をしていたつもりではなかったんだな?」
「……はい。キスなんて浮気のうちに入らないと思っていました。」
「では、お前の中では浮気はどこからなんだ?」
「性器を、女の体の中に入れたら、と思っていました。」
「ということは、アイリーンの部屋で指を体の中に入れたのも浮気に入らないと思っていたわけか。」
「思っていました。でも実際やってみて、これはほぼ浮気ではないかという気になりました。」
だから、焦ったのだ。メルリーではない女に何をしているのだ、と。
昨日、アイリーンが誘って来たのも、結婚している時にあそこまで触れたのだから、離婚したのなら最後までできると思ったからだろう。
ブレイズが拒絶するはずもないといった感じで、性器に手を伸ばしていたのだから。
「アイリーンの住まいは王宮侍女も多くいる場所だ。
アイリーンの放った言葉は、彼女たちを通して広まり、奥さんは『寝取られ妻』と言われているらしい。」
あぁ、どれだけメルリーを傷つけたのか。
ブレイズは自分の過去の言動を振り返り、後悔しかなかった。
「奥さんは妊娠していたことを流産するまで知らなかったらしい。だから妊娠したことをお前に隠していたわけではないが、流産のことを話さなかったのは流産した状況をお前に話せなかったからだろう。」
夫の上官の屋敷で、夫の浮気を嘲笑われながら倒れたのだ。
口にすることも嫌だっただろう。
むしろ、罵倒する相手はブレイズしかいないのに辛くて、ブレイズに浮気を認めさせようと必死になるしかなかったということだ。
「今更だが、妻のお茶会は禁止した。アイリーンにも以後醜態を晒すようなら親睦会での禁酒を言い渡す。
離婚したからと言って、親睦会でアイリーンとキスする醜態をお前も見せてはいけない。わかったか?」
「はい。申し訳ございませんでした。」
「訓練場でもだぞ?公私混同は許さない。」
「……はい。」
以前の訓練場でのキスも報告されたらしい。
部隊長は、ブレイズとアイリーンが昨晩関係を持ったことで付き合い始めたと思っているようだ。
だが、そんなつもりはない。
しかし、ここでそれを言えば、無責任さと節操のなさを咎められることだろう。
どうして自分は仕出かした後でしか反省できないのだろうか。
メルリーに詫びたいが、彼女には時間が必要だろうと思った。
今、ブレイズが謝ったところで、過去のことは元には戻らないのだから。
「あ、訓練場でのキスを奥さんが見ていたらしいぞ。」
なんてことだ。
アイリーンが酔っ払うとキスをするという前提も覆っていたわけで、嘘をついたと思われただろう。
あの時のキスも拒絶する振りさえしなくて、イーサンに注意された。
メルリーに信じてもらえるわけがなかったのだ。
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