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しおりを挟むベネディクトがタフレット公爵家を訪れた日、ローザリンデはいかに自分が悪者にならずに婚約解消できるかを考え、それを伝えることにした。
「ベネディクト様、王太子殿下の側妃のお話をお聞きしたことがありますか?」
「ああ、うん。どうやら近々正式に選定されると聞いたね。」
「正式に、ですか。もう候補は出揃っているのでしょうか?」
「どうだろう?ある程度は決まってて、その中から選ぶんじゃないのかな?」
「そうですか。……実は、ソレーユがその候補に入っているようなのです。しかも最有力候補として。
ですが、あの子は王宮侍女に合格したばかりでその気はないと。
それに、ソレーユがもし選ばれてしまうと、繊細なあの子では無理だと思うのです。
王太子妃殿下と上手く付き合えるとは思えません。
振る舞いによっては、このタフレット公爵家も非難されてしまうのではないかと不安で。」
「そうか?ソレーユ嬢がそんな繊細な心の持ち主であるとは気づかなかったが。」
「あの子は夫の浮気に寛大になれる子ではありません。既に妻がいる方に嫁ぐことになるのです。
妃殿下に失礼なことを仕出かすのではないかと思うと……
選定の基準にはそういった内面を考慮されないですよね?」
「どうだろうか。事前に打診くらいあるだろうから、断れると思うが?」
「断るなんて、ソレーユの立場では許されるはずもありません。私はそんなあの子が可哀想で……
ですから、考えたのです。私が側妃になることがあの子のためになるのではないかと。」
「君が側妃に?」
「ええ。公爵令嬢である私なら王宮でも上手く立ち回れます。」
「……ということは、僕たちの婚約は解消すると?」
「結婚まであと8か月という今頃にこんなことを言うのは心苦しいのですが……
ソレーユのためにも、我が公爵家のためにもそれが一番良いのではないかと思うのです。
ですので、何とか円満な解消にしていただけないかとお願いしたく思います。」
「なるほど。わかった。私としては君の決断を応援したい。父には上手く伝えたいと思う。
君はお父上には話したのか?」
「まだです。あなたの意見を聞いてからと思いましたので。」
「そうか。では僕が同意していることも伝えるといい。
その後のことは、親同士で解決してもらおう。大丈夫だよ。揉めることはないから。」
「ありがとうございます。ベネディクト様の同意があれば安心ですわ。」
「うん。今までどうもありがとう。」
「こちらこそ。ベネディクト様の今後のご活躍をお祈りしておりますね。」
ベネディクトを見送り、ローザリンデは話が思い通りに進んだことを喜んだ。
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