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しおりを挟むローザリンデが王宮へと向かった2日後、レジャード公爵とベネディクトがタフレット公爵家を訪れた。
3日後に伯爵領に向かう予定のソレーユは婚約解消に伴う何かがまだ終わっていなかったのかと不思議に思ったが、自分には関係ないと準備を続けていたところ、公爵様に呼ばれて応接室に向かった。
「ソレーユ嬢、久しぶりだね。卒業おめでとう。」
ベネディクトが明るく挨拶をしてくる。
「レジャード公爵様、ベネディクト様、お久しぶりです。無事に卒業できました。」
「うん。今日は、君の実家の伯爵領のことについて話があるんだ。」
「伯爵領のことですか。兄にではなく私に?」
「君の返事次第で、兄上にも話を持っていくことになる。聞いてくれるかな?」
ベネディクトが言うには、伯爵領にある手つかずの鉱山には希少な鉱石が埋まっている可能性があるそうだ。
伯爵領に災害が起こった後、ベネディクトが友人と勉強がてら訪れた際にその可能性に気づいた。
しかし、優先順位はどう考えてもダメになった畑を元に戻すことだ。
なので、その件を兄に言うことを先延ばしにした。
あるかどうかもわからない鉱石に人手も金もかけるわけにはいかないだろうから。
だが、タフレット公爵家とレジャード公爵家、そしてソレーユのカシム伯爵家の共同事業として、その鉱山の発掘に取り掛からないか、ということだ。
調査も人手も金も、とりあえずは両公爵家から捻出する。
何も見つからなければ、失敗。
鉱石が出れば、鉱石流通のノウハウのない伯爵家よりも両公爵家で運搬や加工、販売などを手掛ける。
「そう言えば、昔、父があの鉱山は最終手段だって言っていました。」
「必ず何か見つかるといったものではないからね。それに人手と金がかかるから。」
苦笑いすることしかできない。今の伯爵家に最終手段は必要だけど、人手と金がないのだから。
「賢い君ならわかると思うけど、うちが不確かな事業に金を出す理由はないよね。」
「ええ。タフレット公爵家は親戚ですが……」
「うん。だから、うちも親戚になろうかと思って。」
「親戚?カシム伯爵家とレジャード公爵家が?」
「そう。でないと、共同事業の関係を築けないだろう?」
いや、それはわかるんだけど。
この国では、隣接する領地か縁戚関係にあれば共同事業が興せる。
金のある高位貴族が手あたり次第に下位貴族の領地の事業に関われないようにするために。
どうしてもその領地にあるもので事業を興したい場合に手っ取り早いのが婚姻関係になること。
この場合もそういうことなんだろうけれど、ベネディクト様って妹いたっけ?
お姉様は既に嫁いでるはずだけど、離婚した?
それとも親戚から養女でも貰うとか?
「あの、兄と縁を結ぶということですよね?どちらのご令嬢を?」
「………君の兄上の話じゃないよ。僕と君との縁組だ。」
は?私とベネディクト様?なんでよ!
「私はもうすぐ王城で働くのですが。」
「残念ながら、僕が仕入れた情報によると君は王宮に回されるかもしれないよ?」
ベネディクト様が耳を貸せというので近づけると、恐ろしいことを言われた。
『ローザリンデが君を専属侍女にしたがってる』
伯父様に聞こえないように小声で教えてくれたのに、悲鳴を上げそうになってしまった。
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