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5.
しおりを挟む馬車の中には私とロレーヌとカミラ。
こんなことになるとは思わず、侍従も連れて来ていない。
「昨日会ったばかりで結婚してしまったけど、ロレーヌと呼んでいいかな?
令嬢ではなくなったので、ロレーヌ嬢と呼ぶのは変だろう?」
「…はい。ロレーヌとお呼びください。私は何とお呼びしましょうか?」
おお!会話になってる。
「ドリューでいいよ。」
「ドリュー様。母や伯父が無理を言ってこのようなことになり申し訳ございません。」
「ん?あぁ、再婚するつもりでいたのは本当だから気にしないで。
それより、私は12歳も年上だけどよかったのか?」
「いえ。大変ありがたく思っております。」
修道院よりもマシってとこかな?
「……それにしても、君との結婚の話が私のところに来るまでに何人が間にいるんだろうね?」
「伯父様とは直接のお知り合いではないのですね?」
「ああ。私は昨日一緒にいた伯爵家のサイモンという友人から6日前に手紙をもらってね。
5日前に話を聞いたんだ。
サイモンの妻の姉の夫の友人の妻?が既にどこの誰だかもわからないが侯爵に繋がるんだろう。」
ロレーヌはカミラと一緒になってクスクス笑っている。
よかった。ちゃんと笑えるんだ。
カミラが、先にこれだけは言っておきたいと話し始めた。
「子爵様、ロレーヌ様はおっとりとした方なのです。
お父上の侯爵様や元婚約者の侯爵令息の方も、ロレーヌ様が言葉を返す前に無視をしたと言います。
考えを頭で纏めてから話そうとするのが間に合わず。
ですので、すぐに言葉にならなくても無視をしているわけではないとご理解ください。」
「なるほどね。確かにお父上の言葉に口を挟むのは難しいだろう。せっかちそうだったしね。
怒られるから簡潔に纏めて話す必要がある。だけど、その前に次の言葉が来る。
忙しい侯爵とうまく会話をできないまま、ここまできてしまったってことだね。」
「その通りでございます。」
「大丈夫だよ。言いたいことがあればちゃんと聞くから。『待って』って言えばいい。
少しずつお互いを知って夫婦になっていければいいと思ってるから。」
「…本当に、私を妻として置いてくださるのですか?」
「え?もちろん。……ひょっとしてこの結婚に別の目的があった?」
「いえ。子供を産むまでかと。」
「いやいや。田舎にうんざりして出ていきたいって言わない限り離婚もしないし。
王都にもあまり行かないし、お茶会の誘いもほとんどない。
だから、ドレスもほとんど必要ないからあまり買うこともないし、宝石もそうだ。
申し訳ないが子爵家に見合ったランクのものになる。
君が贅沢な生活をしたいのなら合わないとは思うが、そうではないだろう?」
「…はい。むしろ物欲はあまりありませんし華美なものも苦手です。」
「うん。反対に何をしたらいいのかわからなくなるかもしれない。
ゆっくりと馴染んでいけばいいよ。これからの方が長いんだから。」
まだ16歳のロレーヌ。何か楽しみを見つけてくれたらいいな。そう思った。
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