居場所を失った令嬢と結婚することになった男の葛藤

しゃーりん

文字の大きさ
5 / 14

5.

しおりを挟む
 
  
馬車の中には私とロレーヌとカミラ。
こんなことになるとは思わず、侍従も連れて来ていない。


「昨日会ったばかりで結婚してしまったけど、ロレーヌと呼んでいいかな?
 令嬢ではなくなったので、ロレーヌ嬢と呼ぶのは変だろう?」 

「…はい。ロレーヌとお呼びください。私は何とお呼びしましょうか?」


おお!会話になってる。


「ドリューでいいよ。」

「ドリュー様。母や伯父が無理を言ってこのようなことになり申し訳ございません。」

「ん?あぁ、再婚するつもりでいたのは本当だから気にしないで。
 それより、私は12歳も年上だけどよかったのか?」

「いえ。大変ありがたく思っております。」


修道院よりもマシってとこかな?


「……それにしても、君との結婚の話が私のところに来るまでに何人が間にいるんだろうね?」

「伯父様とは直接のお知り合いではないのですね?」

「ああ。私は昨日一緒にいた伯爵家のサイモンという友人から6日前に手紙をもらってね。
 5日前に話を聞いたんだ。
 サイモンの妻の姉の夫の友人の妻?が既にどこの誰だかもわからないが侯爵に繋がるんだろう。」


ロレーヌはカミラと一緒になってクスクス笑っている。

よかった。ちゃんと笑えるんだ。

カミラが、先にこれだけは言っておきたいと話し始めた。 


「子爵様、ロレーヌ様はおっとりとした方なのです。
 お父上の侯爵様や元婚約者の侯爵令息の方も、ロレーヌ様が言葉を返す前に無視をしたと言います。
 考えを頭で纏めてから話そうとするのが間に合わず。
 ですので、すぐに言葉にならなくても無視をしているわけではないとご理解ください。」

「なるほどね。確かにお父上の言葉に口を挟むのは難しいだろう。せっかちそうだったしね。
 怒られるから簡潔に纏めて話す必要がある。だけど、その前に次の言葉が来る。
 忙しい侯爵とうまく会話をできないまま、ここまできてしまったってことだね。」
 
「その通りでございます。」

「大丈夫だよ。言いたいことがあればちゃんと聞くから。『待って』って言えばいい。
 少しずつお互いを知って夫婦になっていければいいと思ってるから。」

「…本当に、私を妻として置いてくださるのですか?」

「え?もちろん。……ひょっとしてこの結婚に別の目的があった?」

「いえ。子供を産むまでかと。」

「いやいや。田舎にうんざりして出ていきたいって言わない限り離婚もしないし。
 王都にもあまり行かないし、お茶会の誘いもほとんどない。
 だから、ドレスもほとんど必要ないからあまり買うこともないし、宝石もそうだ。
 申し訳ないが子爵家に見合ったランクのものになる。
 君が贅沢な生活をしたいのなら合わないとは思うが、そうではないだろう?」

「…はい。むしろ物欲はあまりありませんし華美なものも苦手です。」
 
「うん。反対に何をしたらいいのかわからなくなるかもしれない。
 ゆっくりと馴染んでいけばいいよ。これからの方が長いんだから。」
 

まだ16歳のロレーヌ。何か楽しみを見つけてくれたらいいな。そう思った。

 


 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】「かわいそう」な公女のプライド

干野ワニ
恋愛
馬車事故で片脚の自由を奪われたフロレットは、それを理由に婚約者までをも失い、過保護な姉から「かわいそう」と口癖のように言われながら日々を過ごしていた。 だが自分は、本当に「かわいそう」なのだろうか? 前を向き続けた令嬢が、真の理解者を得て幸せになる話。 ※長編のスピンオフですが、単体で読めます。

愛されない女

詩織
恋愛
私から付き合ってと言って付き合いはじめた2人。それをいいことに彼は好き放題。やっぱり愛されてないんだなと…

記憶のない貴方

詩織
恋愛
結婚して5年。まだ子供はいないけど幸せで充実してる。 そんな毎日にあるきっかけで全てがかわる

利害一致の結婚

詩織
恋愛
私達は仲のいい夫婦。 けど、お互い条件が一致しての結婚。辛いから私は少しでも早く離れたかった。

裏切り者

詩織
恋愛
付き合って3年の目の彼に裏切り者扱い。全く理由がわからない。 それでも話はどんどんと進み、私はここから逃げるしかなかった。

塩対応彼氏

詩織
恋愛
私から告白して付き合って1年。 彼はいつも寡黙、デートはいつも後ろからついていく。本当に恋人なんだろうか?

見栄を張る女

詩織
恋愛
付き合って4年の恋人がいる。このままだと結婚?とも思ってた。 そんな時にある女が割り込んでくる。

売られたケンカは高く買いましょう《完結》

アーエル
恋愛
オーラシア・ルーブンバッハ。 それが今の私の名前です。 半年後には結婚して、オーラシア・リッツンとなる予定……はありません。 ケンカを売ってきたあなたがたには徹底的に仕返しさせていただくだけです。 他社でも公開中 結構グロいであろう内容があります。 ご注意ください。 ☆構成 本章:9話 (うん、性格と口が悪い。けど理由あり) 番外編1:4話 (まあまあ残酷。一部救いあり) 番外編2:5話 (めっちゃ残酷。めっちゃ胸くそ悪い。作者救う気一切なし)

処理中です...