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しおりを挟む客室から部屋を移る気がないということは、夫婦になるつもりがないのではないか。
そう不安を覚えていたドリューの考えはすぐに覆された。
その夜、ロレーヌが初夜はどうするのか?と聞いてきたからだ。
ちゃんと子供を産む覚悟もあると知ってホッとしたが、知り合って数日の男に抱かれることに彼女は抵抗がないのだろうか。まさか自棄になっているとか?
「まだ結婚したばかりで、お互いのこともよく知らないだろう?
すっ飛ばした婚約期間だと思って、君が17歳になるまで待つよ。」
「え?そんな……誕生日まで7か月もあります。もう結婚したのに。
私に魅力がないからですか?ドリュー様の好みに合わせます。」
「いや、好みって。ロレーヌはそのままでも魅力的だから問題ないよ。
ただ……ほら、部屋が用意出来ていないだろう?
客室が気に入ったと聞いたけど、妻の部屋や夫婦の寝室を君の思うように変えたらいい。
その改装期間でもっと仲良くなれたら夫婦らしく過ごせると思うんだけど。」
「夫婦って、閨を共にした方が仲良くなれるって聞いたことがあります。」
それはお互いに気持ちがあった場合じゃないかな?……前の妻は嫌そうだったよ?
「そういう場合もあるかもしれないけど……あまりよく知らない男に体中を触られるんだよ?
女性は嫌な気持ちになるんじゃないかと思って。」
君はそこまでわかって言ってる?
「ドリュー様は夫だし。それに、この数日だけでドリュー様と結婚できて良かったと思っています。」
あれ?意外と好印象を持ってくれてるんだ。父親から逃げられたことだけじゃない?
っていうか普通、逆だよな?女性が乗り気ってどういうことだ……
「そう言ってくれると嬉しいけどね。
だけど、まだ馬車のエスコート以外で触れ合ったこともないんだよ?
段階を踏んだ方がいいだろう?
手を繋ぐ・抱きしめる・キスをする。全部すっ飛ばす?」
「あ……」
ロレーヌは真っ赤になった。
まだ16歳なんだ。普通はそこからだろう?
ロレーヌの腕を軽く引いて、ふんわりと抱きしめて言った。
「焦らなくていいんだ。初夜は夫婦の寝室が整ってからにしよう。それでいいだろう?」
抱きしめた胸辺りでコクコクと首を縦に振っているロレーヌはまだ真っ赤だった。
額にキスをすると、顔を完全に隠してしまった。
これでどうやって初夜を乗り切る気だったんだろうか……
手を繋いで、ロレーヌを客室まで送り届けた。
すると、ロレーヌが私の頬にキスをして、素早く部屋に入って行った。
……どうしてやろうか、あの可愛い妻を。
男は単純なんだよ。こんな可愛いことをされると惚れてしまうのは当然だろう?
12歳も年下なんて、もう気にしてられない。
ロレーヌの言う通り、手っ取り早く体から夫婦を始めたくなったじゃないか。
偉そうに改装期間が終えるのを待つと言ったが、これから毎日手を出しそうで葛藤しそうだ。
前の妻には感じたこともない感情だよ。
部屋に入ったロレーヌの頭の中は……
きゃあ!手を繋いだわ。抱きしめられたわ。額にキスをされたわ。
そうよね。段階を踏まずにいきなり初夜だなんて……はしたなかったかしら?
ううん。ドリュー様はとても優しいわ。紳士だわ。
私を気遣ってくださったのだもの。
ちゃんとドリュー様を好意的に思っているってわかってほしくて、頬にキスをしちゃった。
……はしたなかったかしら?大丈夫よね?
「ロレーヌ様、とても嬉しそうにアレコレ考えておられるようですが、初夜がないのならお休みしましょう。」
「そうね。」
なんて幸せな夜なの。こんなの久しぶりすぎるわ。
そういえば、客室が気に入ったって何の話?……シンプルで落ち着くけど。
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