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しおりを挟む領地内では、今までにあり得なかったトラブルがいくつか発生していた。
しかし、騎士の巡回を増やし、領民たちにも注意を促していたために、未然に防いだり、被害を最小限に留めたりすることができ、おかげで留置所がいっぱいになるほど犯人もすぐに捕らえることができた。
王都の社交界でも、嫁いで幸せに暮らしている娘を離婚させて自分の都合のよいところに再婚させようと画策する父親がいるらしいと話題になっていた。
貴族の離婚はそれほど多くはない。
初婚ではなく再婚となると、さらに目立つ。
一体誰のことなのだろうと、知っている人も知らない人もこの話題に注目していた。
ロレーヌの実家、キーレン侯爵家では父と兄がこの話題を耳にしていた。
「くそっ!どうして話題になっているんだ!条件のいい貴族に嫁がせることの何が悪い!」
「……父上。ロレーヌをあの侯爵令息と再婚させるのはよくないですよ。」
「どうしてだ?広い心で婚約破棄を許してやったと美談になるはずだろう?」
「既に結婚して子供までいるロレーヌが、元婚約者に未練があっただなんて誰も信じません。
それでなくてもロレーヌに当たりの強い婚約者として良く思われていない男でしたし。」
「そんなこと結婚してしまえば関係ない。
子爵夫人より侯爵夫人になる方がいいに決まってるだろう?」
「……あのロレーヌなら子爵夫人の方が向いていますよ。碌に会話もできないのですから。」
「会話などせずとも笑って横に立つだけで十分だ。お前の母もそうだろう?
今、ロレーヌがいる子爵領を困らせて、離婚するように仕向けてる。
エスカレートして領民に被害が及ぶと、あの男もロレーヌを差し出すだろう。」
「は?子爵領に何かしているのですか?
やめてください。あなたのせいだとバレたらどうするのです。
他の貴族から相手をしてもらえなくなりますよ?あの侯爵家のように。
私が継ぐこの侯爵家にそんな醜聞はいりません。」
「バレるわけがない。」
「バレますよ。離婚を断った後の領地のトラブルなのですから。
捕まった者たちが白状しないと思いますか?」
「……そのために金をやったんだ。」
「量刑に見合う金なら黙ってるでしょうが、どうせ前金ですよね?
罪を軽くするために依頼主を言うなんてよくあることです。
父上はそんなあくどいことに慣れていないのですから依頼を取り下げてください。」
息子は父親の仕出かしたことに頭を痛めた。
この父親は、短気で傲慢な男ではあるが、受け継いだ領地は豊かで健全であったため、荒事に手を出したことなどないはずだった。慣れていないことをやると、足をすくわれかねない。
子爵領の被害の内容にもよるが、ロレーヌの再婚話と相殺でなかったことにしてほしい。
どちらも悪いのはこちら側なのがわかっているので交換条件にもならないが、子爵もロレーヌを醜聞に巻き込みたくはないはずだ。
父親に、キーレン侯爵家の名を汚さないためにも、ロレーヌの再婚話はなかったことにするようにと言った。
しばらく渋ったが、社交界では好ましく思われていないと感じ取っていたので諦めることにしたようだ。
もちろん、子爵領への嫌がらせも。
ロレーヌを子爵などと結婚させずに修道院に入れておけばよかった。そうブツブツと文句を言っている父親に、道具扱いしかされなかったロレーヌは、父親に情もなくなっただろうなと感じた兄だった。
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