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しおりを挟む侯爵がどういう手を使ってくるかはわからないが、ひとまず見かけない不審な者がいたら騎士たちに告げるように周知させた。
騎士たちの巡回回数も増やす。
目ぼしい観光場所があるわけでもない子爵領で、よそ者は目立つ。
行動を監視することは意外と簡単なのだ。
ロレーヌは父親が元婚約者に嫁がせようとしていると聞いて驚き、怒り、呆れた。
「ロレーヌ、兄上は侯爵と似た考えの者なのか?」
「兄は……父に従ってはいますが、こんな愚かな考えに同意するとは思えません。
別に元婚約者の侯爵家と繋がらなくても、何とかすると思いますし。
それに、私をあの家に嫁がせた場合の父の常識のない行動は批判されると思うのですが。
私への冤罪で周りの貴族が離れていっているのに、どうして寄っていくのか。
私があの家で子供を産んで、侯爵となった孫にいろいろ融通させるつもりでしょうが……
その頃まで自分が侯爵でいるつもりなのでしょうかね?老害だわ。」
「っはは。老害か。辛辣だな。
エントス侯爵やサイモンたちにも助けてもらおうか。
すでに結婚して子供もいる幸せな娘を離婚させて、愚かな元婚約者と再婚させようとしている。
そんな醜聞の的になるようなことを考える父親がいるらしい。そう社交界で噂させるんだ。
誰…とまで言わなくても伝わるだろう。
侯爵はそんな批判に耐えられるかな?」
「私が元婚約者と仲が良かったことなどありませんから、私が望んだことなんて誰も思いません。
一緒に夜会にでも出ますか?」
「そうだな。離婚などあり得ない。その印象を与える必要もあるかな。
噂が広まった頃に夜会に出ようか。
ドレスも作ろう。」
「ありがとうございます。ごめんなさい、迷惑かけて。
……ここに居て、いいのですよね?」
「当たり前だろう?大切な妻なのに。愛してるよ、ロレーヌ。」
「嬉しい。私も愛してるわ。」
本当はこんなに表情豊かになったかわいいロレーヌをみんなに見せたくはないのだけれど。
子爵夫人として、まだ顔見せもしていないからちょうど良い機会ではある。
ロレーヌにキスをしながら、そんなことを考えていた。
エントス侯爵やサイモンに、ロレーヌの父の企みを知らせ、協力をお願いした。
どちらも、キーレン侯爵の、ロレーヌを道具のように扱う考えに怒りを滲ませた手紙が返信されてきた。
噂はさりげなく広めておく。
エントス侯爵家で夜会をするので、それに合わせて王都に来ればいい。と。
離婚する気など、微塵もない仲の良さを堂々と披露するように。そんな言葉も書いてあった。
ロレーヌと結婚してから、一人で王都に行く機会はあった。
妊娠中のロレーヌを領地に置いたままで。
その際、エントス侯爵にも会って、ロレーヌの妊娠と仲良くやっているということは伝えた。
人前にロレーヌと一緒に出ることは初めてとなるが、12歳も年下の妻に夢中なデレデレとした夫として見られないように気をつけないとなぁと変な心配をした。
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