出会ってはいけなかった恋

しゃーりん

文字の大きさ
8 / 17

8.

 
 
彼がクレソン王太子殿下であるならば、ローリエが原因でマドラス公爵令嬢との婚約を考え直したいなどと言うとは思えない。

王家は絶対に曾祖母のことを知っているからだ。あの二の舞になるようなことをするはずがない。

まぁ、今回の王太子殿下の婚約者は国内の貴族だけど。 


「男爵令嬢が王太子妃になれると思っているの?」

「はい……?なれるわけがないじゃないですか。」

「そうよね?わかっているわよね?私は8年も王太子妃教育をしてきたのよ?恥じないように努力してきたわ。隙を見せれば足をすくわれる。だから、多少傲慢にも振る舞ってきたわ。
そう指導されてきたことで殿下が私のことを苦手に思っていることにも気づいているけど、どうしようもないの。
それに、今更婚約を解消されたら誰に嫁ぐというの?後妻?修道院?
私が何か悪いことしたって言うの?殿下はひどいわっ!」


すごい剣幕で一息に言われたけれど、私にどうしろと?

まぁ、言いたいことはわからなくもない。

でも、王太子殿下がどう思って婚約を考え直したいと言ったのかは、本人にしかわからないだろう。
 

「あの、無知で申し訳ないのですが、もし王太子殿下が王太子の地位を降りることになった場合、次は誰になるのでしょうか。」

「……ほんと、無知ね。王弟殿下の長男になるでしょうね。王女殿下は女王になれないから。」

「ではその方の婚約者になられたらよろしいのでは?」

「あなた馬鹿なの?彼には相思相愛の婚約者がいるの。私に邪魔をしろと?」

「ですが、その方は王太子妃教育を受けていらっしゃらないのですよね?」


そういう意味では王弟殿下の長男も王太子教育を受けてないのかな?
だけど、国王陛下も今すぐ譲位するわけじゃないから時間はあると思うけど。
あれ?じゃあ、王太子妃教育も今からでも間に合うんじゃない?その相思相愛の婚約者の方が。
じゃあじゃあ、マドラス公爵令嬢はやっぱり婚約者になれない?


「そうだけど、あなた、まずどうしてクレソン王太子殿下が地位を降りると思っているの?」

「え……?だって、長年の婚約を解消したいだなんてその覚悟の上なのかと。」

「あなた、不思議な考え方をするのね。普通は婚約者をすげ替えたいのかと思うわ。
だから私は、殿下があなたを望んでいるのだろうと思ったの。」

「……それはあまり現実的ではないですね?」

「確かにそうね。馬鹿かと思っていたけれどまともな考えもできるのね。」


辛辣なお言葉の後は褒められたのかな?成績で見ると私は馬鹿ではないのだけれど。
 

「つまり、あなたは王太子妃になる気はないと思っていいのね?」

「私が望んでいい地位ではありませんので。」

「殿下があなたを側妃に望めば?」

「私はハーブス男爵家の跡継ぎですし、側妃でも男爵家となると周りから非難されることでしょう。」

「……では殿下が王太子ではなくなれば、男爵家で受け入れると?」

「それは……私が選べることではありませんので。」


彼が『ワケアリ』として来るのであれば喜んで受け入れる。
 
だけど、そうなるとこのマドラス公爵令嬢は嫁ぎ先を失ってしまうのかもしれない。
輝かしい未来に向けてひたすら努力してきた彼女は、私よりもよほど価値のあるに違いないのに。

 
彼がなぜ婚約を考え直したいと言ったのか、それが私に関係があるのか、確かめなければならないだろう。


  

 

あなたにおすすめの小説

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

某国王家の結婚事情

小夏 礼
恋愛
ある国の王家三代の結婚にまつわるお話。 侯爵令嬢のエヴァリーナは幼い頃に王太子の婚約者に決まった。 王太子との仲は悪くなく、何も問題ないと思っていた。 しかし、ある日王太子から信じられない言葉を聞くことになる……。

嘘が愛を試す時 〜君を信じたい夜に〜

月山 歩
恋愛
サラとマリウス・ハンプトン侯爵夫婦のもとに、衝撃的な告白を携えた男が訪れる。「隠れてサラと愛し合っている。」と。 身に覚えのない不貞の証拠に、いくらサラが誤解だと訴えてもマリウスは次第に疑念を深めてゆく。 男の目的はただ一つ、サラを奪うこと。 *こちらはアルファポリス版です。

公爵令嬢は運命の相手を間違える

あおくん
恋愛
エリーナ公爵令嬢は、幼い頃に決められた婚約者であるアルベルト王子殿下と仲睦まじく過ごしていた。 だが、学園へ通うようになるとアルベルト王子に一人の令嬢が近づくようになる。 アルベルト王子を誑し込もうとする令嬢と、そんな令嬢を許すアルベルト王子にエリーナは自分の心が離れていくのを感じた。 だがエリーナは既に次期王妃の座が確約している状態。 今更婚約を解消することなど出来るはずもなく、そんなエリーナは女に現を抜かすアルベルト王子の代わりに帝王学を学び始める。 そんなエリーナの前に一人の男性が現れた。 そんな感じのお話です。

【完結】「政略結婚ですのでお構いなく!」

仙冬可律
恋愛
文官の妹が王子に見初められたことで、派閥間の勢力図が変わった。 「で、政略結婚って言われましてもお父様……」 優秀な兄と妹に挟まれて、何事もほどほどにこなしてきたミランダ。代々優秀な文官を輩出してきたシューゼル伯爵家は良縁に恵まれるそうだ。 適齢期になったら適当に釣り合う方と適当にお付き合いをして適当な時期に結婚したいと思っていた。 それなのに代々武官の家柄で有名なリッキー家と結婚だなんて。 のんびりに見えて豪胆な令嬢と 体力系にしか自信がないワンコ令息 24.4.87 本編完結 以降不定期で番外編予定

私の婚約者様には恋人がいるようです?

鳴哉
恋愛
自称潔い性格の子爵令嬢 と 勧められて彼女と婚約した伯爵    の話 短いのでサクッと読んでいただけると思います。 読みやすいように、5話に分けました。 毎日一話、予約投稿します。

【完結】嘘も恋も、甘くて苦い毒だった

綾取
恋愛
伯爵令嬢エリシアは、幼いころに出会った優しい王子様との再会を夢見て、名門学園へと入学する。 しかし待ち受けていたのは、冷たくなった彼──レオンハルトと、策略を巡らせる令嬢メリッサ。 周囲に広がる噂、揺れる友情、すれ違う想い。 エリシアは、信じていた人たちから少しずつ距離を置かれていく。 ただ一人、彼女を信じて寄り添ったのは、親友リリィ。 貴族の学園は、恋と野心が交錯する舞台。 甘い言葉の裏に、罠と裏切りが潜んでいた。 奪われたのは心か、未来か、それとも──名前のない毒。

4人の女

猫枕
恋愛
カトリーヌ・スタール侯爵令嬢、セリーヌ・ラルミナ伯爵令嬢、イネス・フーリエ伯爵令嬢、ミレーユ・リオンヌ子爵令息夫人。 うららかな春の日の午後、4人の見目麗しき女性達の優雅なティータイム。 このご婦人方には共通点がある。 かつて4人共が、ある一人の男性の妻であった。 『氷の貴公子』の異名を持つ男。 ジルベール・タレーラン公爵令息。 絶対的権力と富を有するタレーラン公爵家の唯一の後継者で絶世の美貌を持つ男。 しかしてその本性は冷酷無慈悲の女嫌い。 この国きっての選りすぐりの4人のご令嬢達は揃いも揃ってタレーラン家を叩き出された仲間なのだ。 こうやって集まるのはこれで2回目なのだが、やはり、話は自然と共通の話題、あの男のことになるわけで・・・。