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しおりを挟む曾祖父のせいで罰を受け続けるハーブス家。
曾祖父の恋人だったレイチェルが1代目なのだから彼女は4代目になるのだ。
申し訳なく思う気持ちからか、彼女の現状を知るためによく話をするようになった。
だが、話せば話すほど、彼女と過ごすことが楽しく感じた。
彼女を好きになった。
私が婚約者オリヴィエと婚約解消すれば、罰としてハーブス家に行くことができるのではないか?
あまりにも愚かなその考えを心から打ち消すことができなかったことでオリヴィエに婚約を考え直すなどと口走ってしまった。
オリヴィエにも傷がつく。ローリエに気を取られて曾祖父の教訓を忘れてはいけなかった。
最低なことをしてしまった。
私が王太子だと言うことを彼女が知った。
正直な気持ちを打ち明けた。
王族でも、王族だからこそ、できなくて、もどかしい、卑怯で臆病な醜態を晒した。
それでも、彼女は私と会えてよかったと言ってくれた。
彼女とこの図書館以外で会うことなど許されることではない。
王太子である自分の行動は、思っている以上に人に見られていることを意識する必要があった。
オリヴィエという婚約者がいるのに違う令嬢といる姿を見られれば、ローリエはもちろん、オリヴィエも噂の的になってしまう。
それがわかっていても、彼女との最後の思い出がほしかった。
彼女に言った通り、私はオリヴィエに許可を得るために呼び出した。
「ハーブス男爵令嬢に会ったそうだね。」
「……ええ。ごめんなさい。でも、いろいろと私の勘違いだったのかしら?腑に落ちなくて。」
「私が婚約を考え直したいと言ってしまったからだな。すぐに取り消したが聞こえていなかったようだ。」
「取り消し?……そうだったのですね。失礼しました。」
「いや、無責任なことを口にした私が悪かった。申し訳ない。」
「いえ、では結婚は予定通りでよろしいのですよね?」
「ああ。だが、一つだけ頼みがある。ハーブス男爵令嬢と少しだけ外で会いたい。」
「学園の外、ということですね?……2人きりで?」
「もちろん、完全に2人きりではない。護衛も近くにいるし、何より屋外だから他人もいるだろう。」
「……最後のお別れ、ということでよろしいの?」
やはり、オリヴィエは賢い女性だ。クレソンの気持ちを悟っているのだろう。
だが、最後と認めたくないのが正直な気持ちだった。
「王太子として、次期国王になる者として、その責務をやり遂げる決意のために。」
クレソンの意味不明な決意のためのデートを、オリヴィエは苦笑しながら了承してくれた。
彼女と外で会う最初で最後の日。
時間は夕方から1時間ほどになるだろう。
前に話した、夕日と星空が綺麗な場所に彼女と行きたかった。
どうしてそこを選んだかと言えば、意識すれば毎日のように見るものだからだ。
王都の観光名所を訪れたところで、彼女はほとんどを領地で過ごす。
レストランやカフェに行ったところで、同じ物を食べなければ思い出すこともないだろう。
いつもの図書館以外に、彼女の記憶に鮮明に残る何かを与えたいと思ったのだ。
私は、卑怯者だから。
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