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しおりを挟む翌日、昨日と同じ東屋で待ち合わせすると、シグルドが言った。
「弟の学費と寮費は全部支払手続きをしたから心配いらない。」
「え?してくれたの?私がしなくてもいい?」
「ああ、問題ない。弟が使える必要経費も入れておいた。
成長期だから服や靴もサイズが変わるし、勉強に必要な物もいろいろ買いたくなるだろう?
あの1000万もそれを考えた金額なんだろうし。」
「そうだけど……ありがとう。あなたのお小遣い、大丈夫?」
「……お小遣い、か。懐かしい響きだな。
問題ないよ。自分で稼いだ金だからな。親も干渉しない。」
自分で稼いだ金……さすが公爵令息。教育が違うわね。
「それで……あの、場所はどこで?
寮の私の部屋ってわけにはいかないし、あなたの屋敷ってわけにもいかないわよね?」
「あぁ、学園のある日は近くの別邸から通ってる。そこでいいだろ。行こう。」
東屋の近くの道から通用門が見えた。
こんなところから出入りできるなんて知らなかったから驚いた。
しかし、登録されている人しか出入りができないらしい。
誰でも入って来られるわけではないと聞いて、ホッとした。
学費の支払いの時に、私の通用門登録も済ませてくれたそうで、私一人でも出入りできるらしい。
正門を通らないで外から戻れるのであれば、別邸からの帰り便利になる。
公爵令息が指示したら手続きなんて簡単に終わるんだろうなぁ。
別邸に着くと、使用人たちに出迎えられた。
前もって伝えられていたのか、私がいても驚かれることもなかった。
シグルドの部屋について、聞いてみた。
「ひょっとして、今までも何人も女性を連れてきていたの?」
「ははっ。まさか。ユリアが初めてだ。」
「公爵家の使用人ってやっぱりすごいのね。」
「驚いても顔に出ないって?まぁ、そうだな。
でも、ユリアの素性は調べられることになる。多分、親にも伝わるな。」
顔が引きつった。
あまりに堂々としているから忘れそうになっていたけれど、シグルドには婚約者がいるのだ。
「素性の怪しい女を相手するよりも、素性が知れていて割り切っている女性の方がいいんだ。
コソコソしていると悪いことをしている気になるだろ?
堂々としていれば、ほら。自分で買いに行かなくても避妊薬まで準備してくれる。」
避妊薬が置かれている場所を指差した。
なるほど。令息本人が店に出向いて避妊薬を買ったり、街の宿に女性連れで入るところを誰かに見られて噂されることになるよりも、使用人に任せてしまった方が安全なのね。
ベッドに連れて行かれて、シグルドが避妊薬を飲み終えて言った。
「ユリア、俺が初めての相手でいいのか?本当に後悔しないか?」
「しないわ。でもシグルドが躊躇するなら、私があなたに奉仕して……」
「わかった。わかった。ユリアは経験がないくせに大胆だな。……キスはしても?」
「ええ。」
顔が迫ってきて、直前で目を閉じると優しく唇にキスをされた。
何度も角度を変えて少しずつ長くなり、やがて食むようになり、唇をなめられたと思ったら、隙間から舌が入ってきた。
食べられそうなくらい、口内をなめられて舌を吸われて苦しくなる。
溜まった唾液を飲み込むと、唇を離してシグルドは嬉しそうに笑った。
『あ。捕まった』
なぜか、そう感じた。
彼は捕食者だ。私は美味しいと思ってもらえるだろうか。
そんな不思議な思いが頭をよぎった。
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