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しおりを挟む亡き母の実家、ブリッジ侯爵家の養女になる手続きと、バンドール公爵令息シグルドとの婚約の手続きは同時に行われた。
『初めまして』『よろしくお願いします』
お互いに淡々としたやり取りで問題なく終えた。
現ブリッジ侯爵は亡き母の兄。
従兄に当たる息子は2人いた。書類上はユリアの義兄になった。
母は、結んでいた婚約を勝手に解消すると婚約者に告げ、父を選んだらしい。
母の父、祖父がものすごく怒り、絶縁された。
後々、母の元婚約者は問題のある人で犯罪を犯し貴族ではなくなったらしいが、頑固な祖父は母を許すことはなかった。
結局そのまま母は4年近く前に亡くなり、その後すぐに祖父も亡くなったらしい。
義父となった伯父は、母から元婚約者について相談されたこともあったし、素行にも気づいていた。
だが、何もできなかったし、するつもりもなかった。
今更、亡き母にもしてやれることはないし、甥姪に伯父だと名乗る資格もない。
急に干渉されても迷惑だろうから、何もしない。
ただ、困ったことがあれば力になる。それは弟アールにも伝えてほしいと言った。
あぁ、非常に不器用な祖父と伯父だったんだなぁと感じた。
婚約が発表されると、シグルドが言っていた『面倒な侯爵家』の令嬢から呼び出しがあった。
……王城での仕事中に。
仕方なしに向かうと、そこにいたのはまだ13歳くらいと思われる令嬢。
可愛らしすぎて、嫌みが嫌みに聞こえない。頭を撫でたくなったくらい。
『おばさん』と言われてしまったけど。まぁ、あなたよりは年上だけどね。
令嬢の方も、ユリアが微笑ましく思っているのに気付いたのか、真っ赤になって罵倒していたのに大人しくなった。
「やっぱり、私みたいな子供じゃシグルド様の相手は無理ですよね。」
「あなたは彼が好きなの?それともお父様に言われたから結婚したかったの?」
「……お会いして話したことなんてありません。」
「あら。彼に恋しているわけじゃないのね。よかったわ。
王太子様には王子様が2人もいらっしゃるし、シグルド様も全く王座に興味がない方よ。
むしろ、そうやって血筋で狙われて兄弟がいなかったことを悔しく思うほどに。
バンドール公爵家は、絶対に反王太子派にはならないわ。
あなたのお父様も孫を王位にだなんて見当違いのことをしている場合じゃないのよ。
あなたに相応しい婚約者を見つける大事な時期なのにね。
うかうかしていると、優良貴族がいなくなっちゃうって泣きついてみて。
じゃないと自分で勝手に探すからって。焦って現実を見てくれるわ。」
「そうですね。
父に従ってここに来たけど、思い合っている2人を引き離して幸せになれるとも思えない。
それ以前に引き離す方法がわかりませんし。
いろいろ言ってしまってごめんなさい。」
「気にしないで。謝罪できるあなたは素敵な令嬢になれるわ。
いい出会いがあるといいわね。」
「ありがとうございます。」
『面倒な侯爵家』の令嬢は、スッキリした顔で去っていった。
決して『おばさん』と罵倒されたことに私は傷ついてないわ。うん。多分。
弟アールが卒業するのを待っていたら、あの令嬢が結婚できる歳になるのね。
なるほど。だから3年待ってたら余計に面倒になってるとこだったんだ。
うん。やっぱり養女になってよかった。
13歳は子供だけど、16歳は女になってるから体を武器にされちゃうわ。
まぁ、純潔ではない自分が人のことは言えないけれど。
今更シグルドと別れるなんて考えられないから、既成事実を作られる前に結婚しなきゃね。
もう少し働いたら、侍女の仕事も辞めることになった。
あの別邸に住んで、結婚式の準備や公爵家について学ぶことになる。
一生働くつもりだったのに、わずか1年ほどで辞めることになるとは思わなかったわ。
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