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リオンとの婚約を解消し、正式にジョエル様と婚約することが決まった。
リオンは婚約解消に納得していないようだったが、アーノン侯爵家と穏便に済ませるにはレティシアがジョエル様に嫁がなければ、領地領民まで苦境に立たされると諭され、了承するしかなかったのだ。
「最後に、レティシアと二人で話をさせてください。」
婚約解消のサインをしたリオンは悲痛な顔でレティシアの両親にそう訴えた。
ルチアのことで被害者なのか加害者なのか、お互いよくわからない関係になっているため、父も頭ごなしに拒否はできないようだった。
「人目のあるテラスでなら、許そう。」
たとえ扉を開けていようと、部屋の中で二人きりにはさせられない。
テラスであれば、会話が聞こえない程度に周りの者を遠ざけて、二人で話すことを許すということだった。
テラスにある椅子に座り、リオンが言った。
「僕は納得できない。」
「わかっているわ。でも、アーノン侯爵家は私たち両家を見逃してくださるのよ。」
「だが、君が犠牲になる。」
「……仕方がないわ。ルチアの姉として責任を取らないと。それに犠牲じゃなくて政略結婚よ。」
「ルチアだけが責任を取るべきだろう?」
「もう、それだけじゃ済まないのよ。何が本当で何が嘘か、それが重要な段階ではないわ。
アーノン侯爵家からすれば、ルチアが不貞したことだけでクロス伯爵家を非難できるの。
そんな妹を持つ私がトレッド伯爵家に嫁いでも、歓迎されないわ。
それに、あなたがルチアの相手だという疑いは晴れていない。
それなのに、私がアーノン侯爵家に嫁ぐことで、許してくれるとおっしゃってるの。有難いことだわ。」
リオンもそうするしかないことはわかっているはず。
「……三年。三年で離婚したらいい。」
「離婚?ジョエル様と?」
「ああ。僕は君を待つ。このままなら、ルチアと結婚させられるだろうが、僕も離婚する。」
リオンは何を言い出したのか。
離婚はそんな簡単にできるものではない。
「結婚前に取り決めをしたらいい。離婚できる条件を。」
「ジョエル様に、その条件を破らせるというの?」
「そう。たとえば、愛人を作れば離婚、とか、婚外子を作れば離婚、とか。」
愛人がいても、レティシアが気づくとは限らない。
というか、条件にしてしまえば愛人の存在を気づかせることなどない気がする。
「うまくいくとは思えないわ。」
「では、三年子供ができなければ離婚するというのはどうだ?」
侯爵家の跡継ぎになる子を産めないということであれば、離婚は可能かもしれない。
しかし、閨を共にすれば子供ができてしまう可能性は高い。
閨を共にしない白い結婚など、望めるはずもないのだから。
「無理よ。」
「レティシア。君がルチアの姉として責任を取るというなら、僕に対しても責任を取ってほしい。」
「……どういうこと?父にはあなたがルチアの相手ではないと伝えているわ。まだ半信半疑だけど、ルチアを全面的に信じている感じではないし、ルチアの相手がわかれば何とかなるかもしれない。」
「さっき言っただろう?このままならルチアと結婚させられるって。互いの両親は乗り気なんだ。他家に婚約解消の事情を突っ込まれるよりも、婚約者の交換の方が傷は小さいからな。」
まさか、リオンの両親が乗り気とは思わなかった。
ルチアを抱いたという記憶がリオンにない以上、てっきりトレッド伯爵夫妻もリオンとルチアの結婚を反対するのではないかと思っていたから。
でも、部屋に二人でいた以上、リオンはルチアと関係を持っていなくても責任を取るべきだということなのだろう。
「子を産めなくする薬を持ってきた。飲んでくれ。」
サラッと言ったリオンの言葉に、レティシアは驚きを隠せなかった。
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