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『子を産めなくする薬を持ってきた。飲んでくれ。』
レティシアはリオンにそう言われ、驚きを隠せなかった。
「どう、して?」
「三年間、ジョエルの子を孕まないためだ。子供を産めば離婚し難くなるから。
僕たちにも子が望めなくなるが、それはどうとでもなる。養子を取ればいいし。
僕は君さえいればいい。三年経ったら離婚して、一緒になろう。」
『君がルチアの姉として責任を取るというなら、僕に対しても責任を取ってほしい。』
さっき、リオンはそう言った。
責任を取って、離婚後の人生を共に歩めと言っているのだ。
「ダメよ、リオン。誰と結婚しても、あなたなら幸せになれるわ。」
「僕は、レティシアと幸せになりたいんだっ!」
「お願い、声を抑えて。」
興奮してきたリオンを宥めた。
リオンは完全にルチアの被害者である。
なかなか気持ちにケリがつけられないのもわかる。
「毎回、避妊薬を飲むわ。それでいいんじゃない?」
「ダメだよ。避妊薬だと見つかるかもしれない。石女だと思わせなければ離婚できない。」
アーノン侯爵家を欺くの?
いえ、欺くわけじゃない。本当に、産めなくなるのだから。
だけど、そんなことできないわ。
そう思っていたのに、リオンはそんな迷いを許さないというようにレティシアを追い詰めた。
「レティシア、僕は子種を殺す薬を飲んだんだ。君との子以外はいらないから。だから、君も僕の子を産めないんだからジョエルの子なんて産まないでほしい。」
リオンの告白に、レティシアは涙が溢れた。
なんということをしたのか。
ルチアのしたことは、罪深すぎる。
リオンにここまでのことをさせてしまうなんて。
レティシアの涙を、リオンがハンカチで拭いながら囁いた。
「このハンカチの中に、薬が入っている。飲んでくれるよね?」
……ジョエル様と離婚するためには、飲まなければならない。
リオンに対しての責任。
レティシアは瞼を閉じて涙を流しながら頷いた。
「必ず飲むんだよ。僕を裏切らないでくれ。」
レティシアは絶望を感じた。
その夜、震える手でハンカチの中にあった包みを開き、レティシアは薬を飲んだ……
一晩中、涙が止まらなかった。
十日後、アーノン侯爵家で正式にレティシアとジョエル様の婚約が結ばれた。
「ルチアさんはいつもジョエルの仕事中におしゃべりばかりして困っていたのよ。ジョエルは聞き流していたようだけど。婚約者としての交流の時間と仕事の時間は別よね?レティシアさん。」
ルチアはジョエル様の邪魔ばかりしていたらしい。両親も頭を下げていた。
「はい。お仕事の邪魔になるつもりはありません。お気に障るようなことはおっしゃってください。」
侯爵夫人は満足そうに頷いていた。
ルチアと合うような夫人ではない。
二人とも、不満が募っていたのではないかと思った。
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そのため、姉のレティシアを望み、婚約者の交換だと思わせたかったのではないかと想像した。
「レティシア嬢、少し庭を歩かないか?」
ジョエル様が微笑んでそう誘ってきたので驚いた。
ルチアからは無口でクールと聞いていたのに。
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