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レティシアはジョエル様にエスコートされて庭に出た。
「母が申し訳ない。」
いきなり謝罪をされて驚いた。
「いえ、こちらこそ、妹が申し訳ございませんでした。」
仕事の邪魔をしていたことといい、純潔を失ったことといい、謝るのはこちらの方である。
「いや、母はルチア嬢じゃなくて君が来てくれることを喜んでいるんだ。」
「そうなのですか?」
歓迎されているとは思えない気がしたけれど。
「気位が高いからね。ルチア嬢は母と合わなくて。母から逃げて私のところに来ていたようだ。」
ちょっと待って。
どこが無口でクール?
ちゃんと会話をしてくれるし、なんなら機嫌がいいようにも感じるし。
何度か会ったこともあるけれど、その時の印象とも随分違うし。
今までのは外面で、今は内面?
婚約者になったから?
どうしよう、ジョエル様は想像していたよりもいい人で優しい。
三年後に離婚するつもりで結婚するということは、ジョエル様とアーノン侯爵家を裏切る行為。
ルチアの仕出かしたことを許してくれたのに、今度は姉である自分が裏切るのだ。
……心が痛い。
でも、もう後戻りもできない。
せめて、今から離婚するまではジョエル様に誠実でありたい。
レティシアはそう心に誓った。
半月後、ルチアの妊娠が発覚した。
「僕の子じゃないっ!!」
リオンがそう叫んでいる声が聞こえてくる。
「今更何を言っているっ?!男ならちゃんと責任を持つんだっ!記憶にないなど言い訳するなっ!!」
トレッド伯爵がリオンに怒鳴る声も聞こえてくる。
クロス伯爵家の両親は、リオンがルチアを抱いたことに半信半疑だったのにリオンに責任を求めた。
トレッド伯爵家のリオンの両親は、リオンとルチアが関係を持ったと信じているらしい。
というのも、ルチアがトレッド伯爵夫人に泣きながらあの日のことを語ったらしい。
『姉と間違われていても、リオン様は優しく抱いてくれたから嬉しかった』と。
リオンのせいでルチアがジョエル様と婚約解消することになり、レティシアが嫁ぐことになる。
ルチアとレティシア、クロス家の姉妹に迷惑をかけたのはリオンだと思っているのだ。
それに、トレッド伯爵夫妻もレティシアよりルチアをリオンの嫁にする方がいいと思っているらしい。
以前は夫妻とレティシアの仲は良好だった。
しかし、ここ数か月で気まずくなっていた。
伯爵に対しては、レティシアの同級生と関係を持っていることを知ってしまったから。
夫人に対しては、いつもニコニコしているのは常識のなさを誤魔化していたのだと知ってしまったから。
結婚後、一緒に暮らすとお互いに気を遣うことになっていたのは間違いない。
嫁がルチアになることは、伯爵夫妻も望むところということだ。
そしてレティシア自身、信じていたリオンを少し疑っている自分がいる。
本当に、ルチアを抱いていないの?と。
あるいは、意識のないリオンをルチアが襲うことが本当にできていたとしたら?
ルチアのお腹の子がリオンの子ではないと言い切る根拠はない。
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