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レティシアに会いたいがために、妊婦のルチアを家に置いてリオンは夜会に来ていた。
アーノン侯爵夫妻とジョエルと共にレティシアが姿を見せ、ジョエルの妻として挨拶して回っている姿はもう立派な夫人かのように見える。
やがて男女に別れ、レティシアは侯爵夫人と共に夫人の輪の中に連れて行かれた。
レティシアが一人にならないかと目で追い続ける。
そして、婚約中に関係を持ったリオルとルチアが節操なしだと言われているような会話が聞こえた。
違うっ!
ルチアの腹の子は僕の子じゃない!
そうは思いながらも、以前よりもあの時の記憶が少し蘇っていた。
ルチアの髪に触った記憶、頬に触った記憶、そしてレティシアに見えてキスをした記憶……
つまり、何もしなかったわけじゃないということを。
体を繋げた記憶はない。
しかし、いずれ思い出すのではないかと恐れていることも事実だ。
……いや、目覚めた時に子種を出した感覚は体になかった。
だから、ルチアの腹の子は僕の子じゃない。
そう思わないと、いろんなことに耐えられない。
レティシアと話がしたい。
そう思いながら彼女を凝視していたからか、急に肩を叩かれてビクッと驚いた。
「リオン殿、ちょっといいか?」
リオンに声をかけてきたのは、ジョエルだった。
レティシアの夫になった男。
僕からレティシアを奪った男、だ。
二人で庭園の人目のつかない場所に来た。
「リオン殿、妻を見るのはやめてほしい。」
「……見るくらい、自由なのでは?」
「彼女は私の妻で、君にも妻がいる。違うか?」
「……僕はレティシアを愛している。ルチアの子は僕の子ではない。」
「証拠は?」
「え……?」
「君の子ではないという証拠。ルチアは君に抱かれたと私に婚約解消を求めてきた。アーノン侯爵家はトレッド伯爵家に事実確認を求めた。君の両親は事実だと認めたが?」
「両親が?」
「確認するのは当然のことだろう?
事実だと認めたことで、君とレティシアとの婚約も解消になると思った。
君はルチアに対し責任を取るはずだ、と。
婚約者がいなくなるレティシアを妻に望んで何が悪い?相当額の慰謝料を減額してやっただろう?
実家や妹の嫁ぎ先が苦境に陥らないように配慮したんだ。
君がルチアを抱いていないと証明できなかったのは、私やレティシアのせいではない。
二人きりになった。それだけでも十分に君の落ち度だ。
いくら不満があろうと、愛していようと、レティシアは私の妻だ。」
証明のしようがないじゃないかっ!
「……今はあなたの妻でも、僕はいつか必ずレティシアを取り戻す。」
「それは聞き捨てならない発言だ。だが私は妻を信じている。」
「レティシアが愛しているのは僕です。僕たちには一緒に過ごしてきた絆がある。」
「君たちが一緒に過ごした時間など、夫婦の私たちはあっという間に越してしまうんだ。
君もルチアと夫婦になったのだから、ルチアと絆を深めるべきだと思うが?現実を見ろ。
君の執着はレティシアを不幸にする。君に大切にされないルチアはレティシアを恨むだろう。」
ルチアが不幸になろうと自業自得だ。僕を嵌めたのだから。
ルチアのせいで、レティシアを奪われたのだから。
「ルチアはレティシアを恨んだりしません。僕がレティシアを好きなままでも気にしないでしょう。」
ルチアは僕に好意があるわけではないだろう。
今でも夫婦らしく暮らしているわけではない。
「……君たち夫婦に関与する気はないので、私たち夫婦にも関わってほしくない。妻に言いよるような素振りがあれば容赦なく対処させてもらう。」
ジョエルは冷たい視線をリオンに向けて去っていった。
言い寄る必要などない。なぜなら、レティシアは僕を裏切れない。
三年後に離婚することは決まっている。
レティシアは僕のものになるのだから。
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