16 / 30
16.
ルチアの葬儀は身近な者のみで行われた。
リオンの妻ではあったが、正式にお披露目をしていない。
二人が並んで立つ姿を誰も見たことがないのだ。
それは姉であるレティシアも両親もそうだった。
「……ルチア、どうしてこんなことに。」
可愛い妹だった。
リオンにあんなことをする前までは。
この一年、顔を合わせることもなかった。
姪が生まれたのに、会いに行くこともなかった。
手紙を貰ったのに、すぐに向かうこともなかった。
ルチアがどんな話がしたかったのか、もうわからない。
父は悲痛な顔をしており、母は泣いている。
弟サイラスはトレッド伯爵家の方を見て眉をひそめていた。
トレッド伯爵、伯爵夫人、リオンの三人は、どこか険悪な雰囲気だった。
ルチアが階段から落ちたのは、伯爵夫人と言い争いをしていたとは聞いたが、突き落としたわけではないのに。
万が一、そうだったとしたら団結して隠蔽するためにあんな険悪になることはないと思う。
トレッド伯爵家で一体何があって、ルチアは手紙を寄越したのか。
この険悪さと関係があるかはわからないけれど、伯爵夫妻の仲は良かったために、不思議だった。
「レティシア、あそこ。」
ジョエル様の目線の先に、赤子がいた。
ルチアの生んだ子、ルネット。
「まあっ!髪色と目の色はリオン様と同じなのね。顔はルチアに似ているかしら。」
これでは確かにリオンの子ではないと言い切れない。
ただ、父とも同じで、数多くいる色ではある。
ルネットはこのままトレッド伯爵家で育てられることになると思っていいのだろうか。
葬儀が終わり、レティシアはリオンに声をかけられた。
「レティシア。」
以前のように呼ぶリオンに不快感を露わにしたのはジョエル様だった。
「リオン殿、レティシアは私の妻だ。呼び方に気をつけてくれ。」
「……義理の姉だ。いいじゃないですか。そんなことより、僕はルネットと領地で喪に服すことにした。」
「領地に向かうのですか?まだルネットは小さいのに大変なのでは?」
トレッド伯爵領地は馬車で四日かかる。
まだ生後八か月ほどのルネットを連れて移動するのは疲れるのでは。
「いいんだ。……君はルネットの伯母だろう?会いに来てやってくれ。待ってるから。」
リオンはレティシアにそう言って、去って行った。
リオンが王都からいなくなる。
そのことを思うと、ホッとする自分がいる。
しかし、リオンが言った言葉は、『離婚したら領地に来てくれ』ということ。
リオンは、ルネットを二人で育てようと思っているらしい。
「……不愉快な誘いだな。有り得ない。」
妻だけを誘う行動は不貞への誘いのようなものだ。
リオンはジョエル様に『レティシアを手に入れる』と宣戦布告をしたも同然だった。
まさか、こんな形でリオンが独り身になるなんて、思ってもみなかった。
あなたにおすすめの小説
最後に一つだけ。あなたの未来を壊す方法を教えてあげる
椿谷あずる
恋愛
婚約者カインの口から、一方的に別れを告げられたルーミア。
その隣では、彼が庇う女、アメリが怯える素振りを見せながら、こっそりと勝者の微笑みを浮かべていた。
──ああ、なるほど。私は、最初から負ける役だったのね。
全てを悟ったルーミアは、静かに微笑み、淡々と婚約破棄を受け入れる。
だが、その背中を向ける間際、彼女はふと立ち止まり、振り返った。
「……ねえ、最後に一つだけ。教えてあげるわ」
その一言が、すべての運命を覆すとも知らずに。
裏切られた彼女は、微笑みながらすべてを奪い返す──これは、華麗なる逆転劇の始まり。
【完結】私の事は気にせずに、そのままイチャイチャお続け下さいませ ~私も婚約解消を目指して頑張りますから~
山葵
恋愛
ガルス侯爵家の令嬢である わたくしミモルザには、婚約者がいる。
この国の宰相である父を持つ、リブルート侯爵家嫡男レイライン様。
父同様、優秀…と期待されたが、顔は良いが頭はイマイチだった。
顔が良いから、女性にモテる。
わたくしはと言えば、頭は、まぁ優秀な方になるけれど、顔は中の上位!?
自分に釣り合わないと思っているレイラインは、ミモルザの見ているのを知っていて今日も美しい顔の令嬢とイチャイチャする。
*沢山の方に読んで頂き、ありがとうございます。m(_ _)m
学生のうちは自由恋愛を楽しもうと彼は言った
mios
恋愛
学園を卒業したらすぐに、私は婚約者と結婚することになる。
学生の間にすることはたくさんありますのに、あろうことか、自由恋愛を楽しみたい?
良いですわ。学生のうち、と仰らなくても、今後ずっと自由にして下さって良いのですわよ。
9話で完結
これ以上私の心をかき乱さないで下さい
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。
そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。
そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが
“君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない”
そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。
そこでユーリを待っていたのは…
【完結】どうか私を思い出さないで
miniko
恋愛
コーデリアとアルバートは相思相愛の婚約者同士だった。
一年後には学園を卒業し、正式に婚姻を結ぶはずだったのだが……。
ある事件が原因で、二人を取り巻く状況が大きく変化してしまう。
コーデリアはアルバートの足手まといになりたくなくて、身を切る思いで別れを決意した。
「貴方に触れるのは、きっとこれが最後になるのね」
それなのに、運命は二人を再び引き寄せる。
「たとえ記憶を失ったとしても、きっと僕は、何度でも君に恋をする」
【完結】ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望
【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド