裏切る前提の結婚は、心が痛かった

しゃーりん

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ルチアの葬儀は身近な者のみで行われた。

リオンの妻ではあったが、正式にお披露目をしていない。
二人が並んで立つ姿を誰も見たことがないのだ。

それは姉であるレティシアも両親もそうだった。


「……ルチア、どうしてこんなことに。」


可愛い妹だった。 
リオンにあんなことをする前までは。

この一年、顔を合わせることもなかった。
姪が生まれたのに、会いに行くこともなかった。

手紙を貰ったのに、すぐに向かうこともなかった。
ルチアがどんな話がしたかったのか、もうわからない。


父は悲痛な顔をしており、母は泣いている。
弟サイラスはトレッド伯爵家の方を見て眉をひそめていた。
 
トレッド伯爵、伯爵夫人、リオンの三人は、どこか険悪な雰囲気だった。

ルチアが階段から落ちたのは、伯爵夫人と言い争いをしていたとは聞いたが、突き落としたわけではないのに。
万が一、そうだったとしたら団結して隠蔽するためにあんな険悪になることはないと思う。

トレッド伯爵家で一体何があって、ルチアは手紙を寄越したのか。
この険悪さと関係があるかはわからないけれど、伯爵夫妻の仲は良かったために、不思議だった。 


「レティシア、あそこ。」


ジョエル様の目線の先に、赤子がいた。

ルチアの生んだ子、ルネット。


「まあっ!髪色と目の色はリオン様と同じなのね。顔はルチアに似ているかしら。」


これでは確かにリオンの子ではないと言い切れない。
ただ、父とも同じで、数多くいる色ではある。

ルネットはこのままトレッド伯爵家で育てられることになると思っていいのだろうか。



葬儀が終わり、レティシアはリオンに声をかけられた。


「レティシア。」


以前のように呼ぶリオンに不快感を露わにしたのはジョエル様だった。


「リオン殿、レティシアは私の妻だ。呼び方に気をつけてくれ。」

「……義理の姉だ。いいじゃないですか。そんなことより、僕はルネットと領地で喪に服すことにした。」
 
「領地に向かうのですか?まだルネットは小さいのに大変なのでは?」


トレッド伯爵領地は馬車で四日かかる。
まだ生後八か月ほどのルネットを連れて移動するのは疲れるのでは。


「いいんだ。……君はルネットの伯母だろう?会いに来てやってくれ。待ってるから。」


リオンはレティシアにそう言って、去って行った。


リオンが王都からいなくなる。
そのことを思うと、ホッとする自分がいる。


しかし、リオンが言った言葉は、『離婚したら領地に来てくれ』ということ。

リオンは、ルネットを二人で育てようと思っているらしい。 


「……不愉快な誘いだな。有り得ない。」


妻だけを誘う行動は不貞への誘いのようなものだ。

リオンはジョエル様に『レティシアを手に入れる』と宣戦布告をしたも同然だった。 
 

まさか、こんな形でリオンが独り身になるなんて、思ってもみなかった。


 

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