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ジョエル様は最初からレティシアに婚約を申し入れたと言った。
父からはそう聞いていないレティシアは驚いた。
「承諾の返事が届き、婚約を結ぶためにご両親と君を招いたが、やってきたのはルチアだった。
私はレティシアに申し込んだはずだと伯爵に問い質したんだ。すると君はリオンと婚約した、と。
ルチアでも大差ないだろうと伯爵は思っていたらしいが非常識だろう?
だから、婚約の話は無しにしようと言ったんだ。だがルチアが食い下がってきた。」
「ルチアが?」
あの子はそんなにジョエル様がよかったの?
「ルチアは『姉が婚約解消することになれば姉と代わるから』と。
君がリオンと結婚するまでは、私とルチアの関係は婚約者未満でいるはずだった。
ルチアはその間、私に好かれる努力をするチャンスが欲しいと言ってきたんだ。」
だけど、ジョエル様はルチアを好きにはならなかった、と。
「ルチアがリオンを嵌めたのは私とリオンの婚約を解消させるため?」
「ルチアに確認はしていないが、その可能性は高いだろう。だがルチアは、リオンを嵌める前に私を襲おうとしていた。ルチアは幻覚剤『ハルシネ』の被害者だと思う。そしてリオンも。」
幻覚剤『ハルシネ』?
「何ですか、それ。」
「ごく一部の間に出回ってしまった危険薬だ。摂取すると幻覚を見る。性的欲求も強くなるそうだ。
ルチアはおそらく、ある男にハルシネを飲まされて体を許してしまった。それを誤魔化そうと私にハルシネを盛って関係を持とうとしたが私に気づかれたため、もう婚約を続けられないと判断した。」
「それで、リオンに幻覚剤を?」
リオンはお酒に酔ってルチアに触れたのではなく、幻覚剤でルチアがレティシアに見えていたということ。
確かに、ルチアも私に間違われていることに気づいていたと言っていたし、リオンも似たような発言をしていた。
「君とリオンの婚約が無くなれば、君は私の婚約者になる。ルチアは最初の契約を思い出したのだろう。
伯爵家のためにはそれがいいと判断して、リオンを狙ったと思う。」
ただルチアとジョエル様が婚約解消しただけでは、私とリオンの婚約に影響はなかったはず。
慰謝料は払うことになっただろうけど。
慰謝料……?莫大だと父が言っていた。特別な契約があるから、と。
ジョエル様と婚約したいと食い下がったのはルチアなのに、ルチアが純潔を失ったことで婚約解消することになっていたら、通常の慰謝料の何倍にもなっていたのかもしれない。
でも、ルチアに代わって私が嫁ぐことになれば、私の実家を苦しめるような慰謝料をジョエル様は請求しなくなる。
だから、ルチアはリオンを狙った。
ルチアはリオンを慕っていたわけでもないのになぜリオンだったのか、という疑問が解消された気がした。
「ルチアに幻覚剤を使った男というのは捕まったのですか?全く噂を聞いた覚えはないのですが。」
「その男はもう死んでいる。被害女性が多くてね、公表できなかったらしい。
それに、ほとんどの女性は口を噤んだまま被害を訴えていないからね。」
ルチアもその一人ということ。
「どうして、ルチアも幻覚剤の被害者だと?」
「私のお茶に入れられた成分を調べた。加害者の部屋にあった物と一致した。
ルチアがその部屋から盗み出したのだと思う。加害者が死んだ後、すぐに。」
ルチアは加害者と顔見知り以上?
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