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恋人に、子供ができたと話した直後、喜んで抱きしめられたのかと思ったら、美愛は落ちていた。
抱き上げられて、マンションのベランダから放り出されたのだ。
ここは15階。
あぁ、死ぬんだ。
恋人に殺されるんだと瞬時に悟った。
そう思って目を閉じたのに、衝撃はやってこなかった。
閉じていた目を開けるとベッドの上。
数人が慌てて出て行くような足音と扉が閉まる音が聞こえた。
「え!?……痛っ、なに、どこ、ええ?どうして?」
顔や体が痛み、しかも長い金の髪が目に入った。
「裸……?うわっ!ベトベト。……襲われたみたいね。……って誰に?」
白くて長い手足のあちこちを押さえつけられていたのか、手形がついていた。
頬を殴られたのか、腫れている気がする。
「ベランダから落ちたら、西洋風の豪華なベッドの上ってどういうこと?しかも、金髪になってるし。」
ベッドの下には、まるで結婚式のお色直しで着るようなドレスが落ちていた。
「……えぇー?まさか、小説とかである異世界転生ってやつとか?」
現実逃避するようにそう口にすると、徐々にこの体の持ち主の記憶を読み取れるようになった。
ミアーナ・ロングストン公爵令嬢。
この国のネヴィル第二王子殿下の婚約者。
ミアーナは、そのネヴィルとその取り巻き三人にここに連れ込まれて襲われた。
婚約者の非道な仕打ちに、ミアーナは体を捨てて魂が救済されることを望んだらしい。
「うわぁ。下衆な男たちのせいで……大切に育てられてきたお嬢様にとってはショックだよね。」
つまり、ミアーナが放棄した体に美愛が入り込んだことになる。
「婚約解消したいからって、これはないでしょうに。」
純潔を失ったことを理由に、ミアーナを修道院に行かせようとしたらしい。
もちろん、相手は知らない男だと言えと脅迫していた。
彼らは、記録水晶を設置して襲っていたのだ。
「記録水晶って動画撮影ってことでしょう?犯人が自分たちだっていう証明なのに、それで脅迫するってバカなの?」
記録を世間に見られて困るのはお互い様であるはずなのに。
いずれにせよ、襲われたミアーナは令嬢として終わることになる。
おとなしくて優しいミアーナなら、何も言わず修道院に行くと彼らは思ってのことだった。
しかし、彼らはミアーナが死んだと思い、慌てて部屋を出て行った。
「ミアーナがこうして生きているって知ったら驚くでしょうね。」
美愛は、ミアーナに代わって彼らが犯人だと言うことに決めた。
「それに、実はこのピアスも記録水晶なんだよね。」
耳に触れて、ピアスがあるのを確かめる。
美愛は、残されたミアーナの記憶からそのことを知った。
ミアーナもネヴィル殿下の婚約を解消したくて、決定的な記録を残したかったらしい。
「まさか、襲われた記録を残して自分はいなくなるなんて。」
捨て身すぎるんじゃない?
まぁ、ミアーナもここまでのことをされるとは思っていなかったようで。
お先真っ暗な人生を歩むよりも、この体を捨てて真っ新な魂で転生することを選びたくなるのはわからなくもない。
入り込んでしまった美愛が不運なだけだった。
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