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貴族令嬢なら、襲われたことを誰にも知られないようにここを出て行くだろう。
しかし、ミアーナを襲ったのは婚約者であるネヴィル殿下とその取り巻き。
ネヴィルはミアーナが純潔を失ったということを大々的に広めて婚約解消するはずだったに違いない。
小説でよくあるパターンなら、ミアーナのあられもない姿を見せるために誰かがやってくる頃。
しかし、ミアーナは死んでしまったと彼らは思っている。
この場合は?
そう考えていると、扉がノックされて開かれた。
ミアーナは、ピアスの記録水晶を起動させた。
「し、失礼。ここに倒れている人がいると聞いたのだが、ミアーナ様のことでよろしいのかな?」
やってきたのは王宮医師だった。
裸のミアーナに医師は驚いた後、そう聞いてきた。
ネヴィル殿下たちは、ミアーナが死んだと思っていたから、その辺にいる貴族ではなく医師を選んだようだ。
「……先生、診察していただけませんか。私、無理やり襲われたのです。」
「襲われた!?誰に……」
「ネヴィル殿下とその友人三人にです。」
「彼らが!?なんということを。」
医師はミアーナに近づいて来て、殴られた頬、押さえつけられて赤く指の跡がついている手首や足首、そして体に付着している精液を見て悲痛な顔をした。
「……これはひどい。」
医師は助手と共にミアーナの体のどこにどんな傷があるかを記していった。
そして、秘部も確認し、裂傷も記した。
「……殿下は己の婚約者になぜこんなひどい仕打ちをなさったのか。」
「ネヴィル殿下は私との婚約を解消したいのです。知らない者に襲われたと言わなければ記録水晶を公にすると脅されました。いっそのこと、公にすればいいのです。そうすれば殿下の非道さが知れ渡るでしょうから。」
あんな男に権力を与えていいわけがない。
その取り巻きたちも、罰を受けるべきだ。
「ミアーナ様、襲ったのは殿下だけではないのですよね?」
「ええ。四人とも、よ。」
ネヴィル殿下だけなら、婚約者という立場なのだから結婚して責任を取ってもらえばいいと医師は思ったのだろう。しかし、ネヴィルは取り巻きたちにも”共犯”だと言わんばかりに許したのだ。
ネヴィルだけならまだしも、そのことが、ミアーナの心を一層傷つけた。
「先生、ちゃんと国王陛下にも私の診察結果をお伝えしてくださいね。私は殿下の思惑通りにこのまま修道院に行くつもりはありません。四人がちゃんと処罰されるのを見届けるつもりです。」
「わかりました。必ず。」
「それから、兄夫婦を呼んでもらえるかしら。見当たらなければ……両親で。」
「わかりました。」
家族以外にこの姿を見られるわけにはいかないので仕方がなかった。
医師はありのままを国王陛下に伝えるはず。
国王陛下はネヴィルに確認するだろう。
ネヴィルはまずミアーナが生きていることに驚き、それから、襲ったのが誰かをミアーナが口にしたことにも驚くに違いない。
「私はミアーナみたいにおとなしい性格じゃないのよ。」
彼らの思い通りにさせるつもりはない。
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