不幸な令嬢に転生しましたが修道院には行きません。

しゃーりん

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ミアーナが毎日笑顔で過ごしているのは無理をしているのかもしれない。

気づかなかったことは夫として失格だとフェルナンドが思っていると、ロングストン公爵が言った。


「コーネル侯爵は女神の存在を信じているか?」


唐突にそう聞かれ、不思議に思いながらも答えた。


「熱心に祈りを捧げるほどの信者ではありませんが、存在は疑っていません。」


時に女神は、死を望むほどの苦痛を味わった者の魂を救い上げてくれるという。
その魂は真っ新な状態で生まれ変わり、転生する。
 
そして極まれに、残された肉体に別人の魂が入ることもあるという記録が残っている。

ロングストン公爵は、誰でも聞いたことのある女神についての逸話を口にした。


「……え!?まさか。ミアーナに魂の救済があったと?」 

「ああ。今のミアーナは、別人なのかもしれないと私は思っている。」
 

無理をして笑っているのではなく、そもそもが別人?


「ではあの事件の後、彼女は自分が誰の姿かわからなかったのですか?」


今のミアーナが別人であるならば、目覚めた時に姿の違う自分に戸惑ったのではないだろうか。


「いやそれが、わかっていた。貴族としての所作もちゃんとしていた。だから、我が家のことを把握しているこの国の誰かの魂なのではないかとあの頃に亡くなった貴族女性を調べてみた。」

「わかったのですか?」

「いや、わからなかった。」

 
別人の魂が残された肉体に入り込んだ場合、元の人物のことはわからないはずである。
しかし、わかっていたとなるとミアーナに近しい人物の魂なのではないかと公爵は思ったのだろう。


「では気のせいなのではないでしょうか。彼女は王子の婚約者として自分を押さえつけて我慢していたが、あの事件をきっかけに我慢をやめて思い通りに過ごすことにしたのでは?
それに、もし別人の魂ならミアーナは死んでしまったということになりますが。」

「確かにそうなのだが、息子もあれはミアーナではないと感じていたのだ。魂の転生を願ったミアーナの代わりに、今のあの子があいつらに罰を与えるために来てくれたのではないかと。
ミアーナ本人ならおとなしく修道院に向かったことだろう。立ち向かうことなど通常の令嬢では考えられないと思わないか?」

「確かに、そうですが。」 


本当に別人なのか? 
いくら結婚したといっても事件から数か月なのにフェルナンドにキスやハグができるのも、苦痛を味わったのが彼女じゃないからか。 

そう思うと、どこか納得できる気がした。


「かれらに罰を与えるために、女神が彼女の記憶を肉体にも残したのかもしれませんね。」
 

そう言うと、ロングストン公爵も頷いていた。
女神ならそんなことも可能なのではないかと勝手に思うことにした。


「私はミアーナにとって冷たい父親だっただろう。もし魂が転生して赤子として生まれ変われたら可愛がってくれる親の元で幸せになってほしいと思っているし、今のミアーナにも幸せになってもらいたいと思っている。」

「私は今のミアーナしか知りませんので、今の彼女を幸せにしたいと思っています。」


フェルナンドがそう言うと、ロングストン公爵は娘を思う父親らしい顔で頷いた。



 

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