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ミアーナは、娘のルティアがこの部屋の前までやってきたことを侍女の視線でわかっていた。
しかし、カイロスがルティアのことをどう思っているのか、ルティアを任せられる男なのかを確かめたくて、ルティアにも聞いてもらおうと思い、入室を待たせたのだ。
「奥様、ルティアお嬢様がお越しにございます。」
「中に入れていいわ。」
ミアーナがそう言うと、カイロスは立ち上がり、入室したルティアをみつめた。
「ルティア嬢、元気そうでよかった。もしかしたら病なのかと心配で来てしまったんだ。」
「カイロス様、わざわざありがとう。荷物も受け取ったわ。」
ルティアはミアーナの隣に座ったが、顔が赤い自覚があるのか、少し恥ずかしそうだった。
「ルティア嬢はお母上によく似ているんだね。初めは姉妹なのかと思ってしまったよ。」
16歳の頃のミアーナと今のルティアは瓜二つと言えるほど似ており、無表情だったミアーナと朗らかなルティアという表情の柔らかさの違いくらいしか見分けられないだろうと思う。
35歳のミアーナは若く見え、16歳のルティアは子供っぽさが抜けてきたために姉妹に見えるとよく言われるようになっていて、密かにミアーナは嬉しかった。
元の世界よりも年上になってしまったが、フェルナンドとの幸せなSEXライフが肌艶を良くしており、貴族夫人の暮らしで家事育児のストレスがないことが若さの秘訣なのかもしれない。
「若く見えるのは母だけでなく、父もかしら。母より15歳も年上なのに、昔から変わらないの。」
フェルナンドは50歳になったが、ハゲてもいなければ腹が出ていることもない。
目尻に多少、皺は増えたくらいで。
ほうれい線の有無で見た目の若さは随分と変わると実感した。
ルティアと話すカイロスは、確かに好意を持っているとわかるほど嬉しそうだった。
「留学するんだって?」
「ええ。」
「……もし、ディオル殿下が婚約を解消して君に求婚したとしたら、受けたいと思っている?」
先ほど、ミアーナは母としてそれは認めないと言ったが、本人の意思はどうなのかカイロスは気になるところなのかもしれない。
もし、ブランシュとの婚約を円満に解消できたなら、ルティアは王子妃になれるのだから。
「私は王族の一員になりたいとは思わないし、ブランシュ様がディオル殿下を慕っておられるのは知っているから、求婚を受けることはないわ。だから、万が一にもそんな状況にならないために、留学するの。」
「だったら、うちの国に来ないか?君がそうしてくれるなら、私も国に帰る。
元々、君に会いたくて、話がしてみたくて留学しただけなんだ。夢で見た君に恋をして。変なことを言ってるのはわかっているけれど、何度も君を夢で見たんだ。
でもこうして会えて、もっと好きになった。君との婚約を望んでいる。婚約者として、一緒に来てくれないかな?」
清々しいほど真面目な好青年である。
ルティアがミアーナだった時に婚約者だったネヴィルとは大違いだ。
だからこそ、ルティアが惹かれるであろうカイロスを女神は選んだのかもしれない。
ルティアは真っ赤になりながらも嬉しそうにカイロスを受け入れていた。
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