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コーネル侯爵領の屋敷まであと半日といったところで、馬車の外にいる騎士たちが警戒する様子が窺えた。
「……姉上、賊のようです。馬車に掴まってください。」
「こんなところに賊?」
今まで出くわしたことはないし、被害を聞いたこともなかった。
馬車は加速し、逃げ切るかと思ったが、やがて停止した。
外では護衛騎士たちが賊と剣を交えている。
「……賊にしては動きが機敏だな。何が狙いだ?」
リカルドは、自分も加勢すべきかと馬車から出ようとしたようだが、その前に後ろから助けが来たらしい。
賊は散らばるように去って行った。
「何だったんだ?」
「怪我人はいるの?」
「ちょっと見てくる。姉上はここにいて。」
リカルドが馬車を降りて怪我人を確認する声が聞こえたが、みな無事のようだった。
そこに後ろから助けてくれた者たちが合流したらしい。
「大丈夫でしたか?賊に襲われたようでしたが。」
女性の声だった。
そして理解した。
これは、『茶番』であると。
「あなた方の馬を見て加勢だと”誤解”して賊は逃げたようです。……ブース侯爵令嬢。」
リカルドの警戒と、少し侮蔑を込めた物言いが聞こえ、ルティアは馬車を降りた。
「まさか、こんなところでお会いするとは。加勢いただき感謝申し上げます。助かりましたわ、ブランシュ様。」
ルティアはブランシュに礼を述べた。
たとえ、賊がブランシュが仕組んだ『茶番』だとわかっていても、気づかないフリをして。
こんなところにブランシュが来ること自体、異常であるとわかっていても。
暗殺をする気があったのであれば、もっと大勢で囲み、確実に一人残らず殺しただろう。
しかし、賊も少人数、ブランシュたちも五人となれば、彼女の目的はルティアと話すことに違いない。
あの賊たちもブランシュの護衛騎士で、略奪や誘拐が目的ではなかったから、こちらの怪我人もいなかったのだ。
「ブランシュ様、ここを抜けた先に屋敷がありますのでそちらでお茶でもいかがですか?加勢のお礼ですわ。」
本邸ではないが、休憩できる屋敷がある。
領地のあちこちを見回る際に滞在するための屋敷があり、その一つだ。
王都から領地の本邸に向かう際は、必ずそこで休憩する。
「お誘いありがとう。お礼されるほどのことはしていないけれど、休憩がてら寄らせてもらうわね。」
ルティアはリカルドと馬車に乗り、出発した。
コーネル侯爵家の騎士の後を、ブランシュたちはついてきていた。
「なんだよ、この茶番は。呆れるな。」
リカルドの言葉にルティアは苦笑した。
「ブランシュ様も悩んでおいでなのよ。ディオル殿下との婚約が解消されないためには私が邪魔なんだろうけれど、まだ行動を起こす時期ではないのもわかっているから、王都から離れてディオル殿下がいない場所で話がしたいんじゃないかしら。」
ディオルはまだ何もしていない。
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