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ルティアたちがコーネル侯爵領に着いてから一週間ほど後にミアーナたちも到着した。
馬車は疲れる。
しかし、この世界の移動手段はまだ馬車である。
車が欲しい。電車に乗りたい。飛行機やヘリがあれば……とミアーナは何度も元の世界の乗り物を恋しく思ったが、仕組みがわからないし、目立つ行動はしたくなかったため、何もしなかった。
馬車のスプリングとクッション、リクライニングは改善させたけれど。
自分が何かをしなくとも、それなりにいつか発展していくはずなのだから。
いわゆる”転生チート”というものは何もなかったため、無難が一番だと思ってきた。
フェルナンドとの夫婦生活と、子供たちが元気に育ち、領地領民が健全であれば、面倒なことに自ら首を突っ込むべきではないと転生してから過ごして来たのだ。
まさか、この世界が物語だったとは思いもせずに。
ルティアが女神から聞いた物語の内容を知ったのは、まだ二週間ほど前の話。
留学に婚約と、まるで何かに導かれるようにルティアはこの国から旅立つことになった。
何かというのは、まぁ、女神だろうけれど。
「お父様、お母様!」
ルティアがミアーナの記憶を思い出そうと、可愛い娘であることに変わりはない。
自分に無関心な親の元で育ったミアーナには転生して幸せになってほしいと思っていたが、ルティアとして生まれ変わった彼女は幸せに育ったと言っていいだろう。
この笑顔を見ればわかる。
婚約者になるカイロスも、女神のお墨付きだと思えば安心して任せられる。
「ルティア、ブランシュ様とは問題なかった?」
「大丈夫よ。留学と婚約の話をすれば安心してくれたみたいだから。」
脅しに来たのか、殺しに来たのか。
しかし、ルティアの話を聞く耳を持っていたらしく、取り返しのつかない事態は避けられたのだ。
お茶を飲みながら、フェルナンドが話した。
「ディオル殿下が少し変になっている。一日に何度もルティアに会いに行こうとするらしい。今は軟禁されている。」
「殿下と顔を合わせなくなってたった二週間なのに?」
「おそらくだけど、ルティアが王都を離れたからじゃないかしら。近くにいないことで何かを感じ取っているように思うわ。」
「じゃあ、留学しても追いかけてくるの?」
ルティアは泣きそうな顔になった。
離れても意味がなければ恐怖だろう。
「女神様はルティアを隣国へと導いているように思うの。だから、この国を離れればディオル殿下も強制力を失って正気に戻るんじゃないかしら。」
「本当に?」
「国から出てみないとわからないわ。それでも強制力が続くようなら、カイロス君と結婚してしまえばいいわ。」
「結婚!?まだ学生よ?」
「でも結婚年齢は16歳から認められているわ。この国でも、隣国でもね。王族の結婚は初婚が決まりだから、既婚者となったルティアとは結婚できなくなる。物語が破綻すれば強制力もなくなるわ。」
婚前交渉でも強制力は消えるだろうが、それは言わないでおいた。
貴族は学園を卒業後に結婚するというのが主流になっているが、16歳になれば今でも可能である。
早い年齢の妊娠・出産は母体に負担を与えるということが広まった結果、卒業後が相応しいと言われるようになっただけで。
「結婚は最終手段よ。」
楽しい婚約期間を過ごしたいだろうから。
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