不幸な令嬢に転生しましたが修道院には行きません。

しゃーりん

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ハバネス王国の王都で数日過ごし、ミアーナとフェルナンドは国に帰ることになった。 
 

「ルティア、ここでの暮らしを手紙を書いてね。楽しみに待っているわ。」

「もちろんよ。お母様たちと離れるのは寂しいけれど、この国に来てすごくホッとしているの。新しい生活がとても楽しみよ。」

「あなたの人生はここからが本番なのかもしれないわね。でも、いつまでもあなたは私たちの娘よ。いつでも頼っていいことを忘れないでね。」
 

ミアーナだった時のように、我慢したり諦めたりする必要などないのだ。
今度こそルティアが幸せになることが重要で、貴族であることが不自由ならば自由に生きてもいいと思っている。
 
まぁ、そんな考えは貴族としての責任の放棄だの何だのと思われるに違いないが、生粋の貴族でもないミアーナにはどうでもいいことである。


「お父様、今まで育ててくれてありがとう。」 

「……まだ嫁に出すわけじゃないぞ。」


確かにそうだ。
卒業まであと二年半あるのだから。

それでも、ルティアはもう自分の居場所はこの国だと決めたのだろう。

血の繋がらない自分を娘として育ててくれたフェルナンドに、離れる今だからこそルティアは口にしたのだ。


「ふふ。長生きしてね。お母様は人気があるんだから。」

「わかっている。ミアを託せると思える男などいないからな。」


二人してひどい。
フェルナンドと死別すれば、ミアーナが次の男を探すはずだと思っているのだから。

そんなこと、ない……はず。 



カイロスとグローリー侯爵夫妻にルティアのことを頼み、この国を後にした。

どうせフェルナンドは、侍女だけでなく他にも誰かをこの国に置いてルティアを守っているはず。
心配性の父親なのだから。 


 
帰りの馬車の中、フェルナンドが聞いてきた。


「ルティアは自分の本当の父親が誰か言っていたか?」


ルティアが生まれてからの16年、フェルナンドが初めて本当の父親と口にした。
ミアーナは親子鑑定する気はなくなっていたが、フェルナンドにそれを言ったこともない。

もちろん、他の三家からもルティアの父親が誰かと聞かれたこともない。
口にしないことが条件でもあったが、調べもしないことは各家にとっても都合がよかっただろう。


「いいえ、聞いていないわ。」

「知らないのだろうか?」

「知ってるんじゃないかしら。でも言う必要もないと思ったのでしょうね。」

 
女神から物語のことを聞いたのは、魂が救い出されてすぐのはず。
”妊娠する”と聞かされれば、”誰の子を”と聞き返したくなるもの。

ミアーナに物語の内容を教えるには、身近な誰かに生まれ変わる必要があった。
リカルドや他の誰かでもよかったのにわざわざルティアになることを選んだのは、女神ではなくルティア本人なのかもしれない。 
 
ミアーナの体に入った美愛が不幸になっていないか心配だったからと前に言っていた。
 
優しい子である。

確かに、ルティアがミアーナの魂を持っていなければ、フェルナンドが実父ではないと知ってショックを受けていただろうし、ディオルやブランシュとの関係もややこしくなっていた可能性もあった。
 
 
「父親はあなただけ。ルティアはそう思っていたのよ。」
 

フェルナンドにそう言うと、彼は涙ぐんでいた。
  


 

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