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ルティアの父親の話をしたからか、フェルナンドがふと聞いてきた。
「ミアの元の世界の父親はどんな人だったんだ?」
フェルナンドと結婚して17年、家族の話はしたことがなかった。
美愛を15階から落とした婚約者のことを言ったくらいで。
フェルナンドはずっと聞きたくても、聞くタイミングを逃していたのかもしれない。
「父親の記憶はないわ。母親も似たようなものね。私の両親は私が幼い頃に離婚して、二人とも私を捨てたの。」
「二人とも?」
「そう。どちらも引き取りたくないって。二人とも、仕事人間だったの。子供は足枷だったのね。」
保育園の送り迎えや行事、朝食と夕食、そして入浴から就寝まで、美愛の世話をする人を雇っていた。
そして美愛が小学校に入学する前に、両親は離婚を選んだ。
「じゃあ、ミアは孤児院に?」
「ううん、母方の祖父母に引き取られたの。」
引き取ってはくれたが、祖父母も嫌々だったのか、甘やかすことはなかった。
祖父は美愛が中学生の時に亡くなり、そこからは祖母と二人暮らし。
家事全般は美愛がするようになっていた。
奨学金で大学に行きたいと話した時、祖母からは『その必要はない』と言われた。
絶望しかけたが、それは早とちりだった。
奨学金を申し込まなくても金はあるということだった。
その時に知ったが、祖父母は美愛の養育費として両親から年150万円ほど受け取っていたらしい。
月5万×2人で月10万。年間120万。
それプラスボーナスと誕生日で30万。
年間計150万×12年で1800万円という大金が大学受験時に美愛名義であったのだ。
祖父母は親の義務だと言って、両親に支払いを命じたらしい。
両親は金で済むならとちゃんと支払い続けていた。
大学卒業までという約束で。
祖父母はその金に一切手を付けることなく美愛を養育してくれていたと知り、驚いた。
そして祖母も美愛が就職した年に亡くなり、祖父母の遺産は美愛のものになった。
母は相続放棄しており、祖父母の養子となっていた美愛の手に入ることになっていたため、養育費に手を付けようが付けまいが同じことだと祖父母は思っていたらしい。
確かに愛情は薄かったかもしれない。
それでも、祖父母が美愛を不自由なく育ててくれたのは確かで、家事ができることも、金に困らないこともひたすら感謝する思いだった。
父は再婚し、専業主婦の妻との間に男の子が一人できた。
母は再婚はしていなかったが、家事をしてくれる恋人と一緒に暮らしていた。
祖父母の葬儀の際に母とは会ったが、事務的な話しかしなかった。
「……とまあ、こんな感じね。でも元の世界では特殊な家族よ?大体は両親のどちらかに引き取られるわ。」
今思えば、祖父母に引き取られてよかった。
二人は美愛のそばにいてくれたのだから。
両親のどちらかに引き取られていれば、家事をしてもらうために雇った人が作って机の上に置いていた食事を一人で食べて、一人で風呂に入り、親の顔も見ずに眠る毎日だったと思う。
小学生がそんな生活をしていたかもしれないと思うと自分が可哀想になる。
「ミアの祖父母はミアのためになることをしてくれていたんだな。いい人たちだ。」
「ええ。」
金に困らないように、独り立ちできるように、してくれていたのだ。
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