不幸な令嬢に転生しましたが修道院には行きません。

しゃーりん

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美愛を殺した婚約者は結局捕まったらしい。


「女神様が何かしてくれたの?」

「いいえ、私はあの世界には干渉できないわ。今にも死にそうな魂を引っ張ってこの世界に転生を望むならそうしてあげるだけよ。
でもそれも滅多にはしないわ。ミアーナのように魂の救済を求められて応えることもね。」 


だから事例が少ないのか。
こちらで救済する人の体に元の世界で死ぬ直前の人の魂を入れているから。
 

「美愛の世界でね、ある動画がネットにアップされて、それを観た人が気づいたの。何か落ちてるって。」


女神の口からネットにアップなんて言葉を聞くとは思わなかった。
意外とあの世界のことにも情報通のようだ。 


「落ちたのが何だったのか気になった人がコメントを書いて、同じように疑問を抱いた人が増えて。人じゃない?って書かれ始めて、人が飛び降りた瞬間だって広まって。」

「距離があったの?」

「そうね。月をメインに撮った映像だったの。大きな丸い月。美愛がいたところの真向かいの家から撮っていたんだけど、間に大きな公園があるから。」

「ああ、あの住宅地からね。」


スーパームーンでも撮影していたのかもしれない。


「それがいつの動画で場所まで調べられて、美愛が亡くなったことまで多くの人に知られたんだけど、落ち方が不自然で落とされたんじゃないかって、もう一人いたって書かれて。」
 
「そこまで広まったら警察が元の動画を撮影者に借りに来たでしょうね。」


警察が映像を詳しく分析すればわかっただろう。
 
彼はベランダに置いていたベンチに上って横抱きにした美愛を落とした。
体格のいい彼なら造作もない。
 

「あの男がいつ結婚して、妻がいつ妊娠していたか、その時期がわかると殺害理由が明らかよね。身勝手な犯行だと罪は重くなったわ。」
 

それは当然である。
情状酌量なんて認められるわけがない。


「女は早産になって、小さな男の子を産んだわ。でも逃げた。」

「逃げた?」 

「保育器というものに入った子供を置いて姿を消したの。名前を偽って暮らしているわ。」

「ひどいわ。女は今でも生きてるのよね?」

「ええ。幸せではないけれど。男の子は女の母親が育てているわ。」


子供を置き去りにしたのだから、罪になるとわかっているのだろう。
保護責任者遺棄罪にあたるのではないか。
だから名前を変えているのだ。

しかし、もう時効になっているだろう。

父親は殺人犯で服役中。母親は自分を捨てて逃げた罪を償わないまま逃げている。
男の子にとってつらい出生になっただろう。

美愛も祖父母に育てられたが、男の子の境遇に比べれば幸せだったのかもしれない。 

こちらの時間の流れと同じであるなら、男の子は16歳になっているだろう。 
強く生きてほしいと思う。


婚約者と浮気相手の女のことはざまあみろといった思いもあるが、どこかスッキリとはならなかった。

しかし、この世界に転生したことでフェルナンドや子供たちと出会えてよかったと美愛は女神に感謝した。

 
「女神様、可能であれば叶えてほしいお願いがあるの。」


もう夢に出てくることはないだろう女神に、ミアーナは図々しくもお願いをした。
 
 
 

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