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しおりを挟む卒業式を終え、結婚式まであと2か月となったある日、僕はライザの家を訪れた。
僕を迎えたのは、真っ青な顔になったライザだった。
「ライザ!体調が悪いのか?今にも倒れそうな顔色だ。今日は寝ていないと。」
「……ヒュー、さっき、スカーレット様が来たわ。」
その言葉で、彼女が何を言ったのかがわかってしまった。
ライザを部屋まで連れて行き、話をすることにした。
「ヒュー、あなた、スカーレット様を捨てたの?」
「ち、違う。捨てたというのは間違いだ。……確かに彼女とは関係を持った。
ごめん。それは僕が悪い。だけど、経緯を説明させてくれ。」
僕は、なぜスカーレットと関係を持つことになったのか、彼女とのやり取りを全て話した。
「……不安になったんだ。頼りない僕が初夜で失敗する想像ができてしまって。
ライザに嫌われたくなくて。
今、思うと優柔不断な僕に考える隙を与えないように誘導したんだと思う。
たたみかけるように不安を煽るようなことばかり言ってた。
勉強のつもりだったけど、単なる浮気でしかない。本当にごめん。」
「どうしてスカーレット様は愛人になると思い込んでいたの?」
ライザは『彼に女の体を教えてあげたから初夜も楽しめるわよ。私は愛人になるからよろしくね』と言われたらしい。
愛人なんて信じられない。と言うと、『結婚するからって捨てられた。でもあなたが許してくれたら愛人になれるはず』と言ったそうだ。
「思い込んでいたんじゃない。
それとなく僕の愛人になりたいと言った彼女にソノ気はないと言ったんだ。
僕はただ教えてもらっているだけのつもりだったから。
だけど、彼女はライザが許したら愛人になれると目論んだ。
君が許したら僕も受け入れるんじゃないかって思ったんだろう。」
「そういうことなのね。
だけど、ヒュー。本当に裏切ったのね。一度だけじゃなくて何度も。
私と、全部、一緒に、初めてを経験するって約束したじゃない!
失敗するかもしれない?それでもいいじゃない。
初めてが痛い?それは閨教育でみんな聞くことじゃない。
私はヒューとなら、どんなことでも乗り越えられると思ってきた。
ヒューは10年も側にいた私じゃなくて、あんな女の言葉に惑わされて……
ごめん。しばらく一人にしてほしい。」
ライザは泣いて、怒って、疲れ果てた顔をしていた。
ライザは寝室で横になり、僕はライザの両親に謝りに行った。
「……ライザの気持ちを踏みにじったってことだな。
結婚前に浮気など、できれば婚約破棄したいところだ。
だが、これは政略結婚だし、式の2か月前に中止だなんてできやしない。
それこそライザの嫁ぎ先がなくなる。
今のライザは知ったばかりで興奮している。だが、あの子も貴族だ。
自分の役割はわかっているから君に嫁ぐだろう。
浮気相手ともう別れたのであれば、今後はライザを大切にしてやってほしい。」
「もちろんです。本当に申し訳ございませんでした。」
僕は、結婚までの2か月、そして結婚後もずっとライザに謝り続ける。
責められても、許してくれなくても、いつか僕の心に再び寄り添ってくれる時を待つつもりだった。
僕は勉強のつもりだった。
スカーレットの体に溺れたわけじゃない。気持ちが動いたわけじゃない。
関係を続けたいと思ったこともないし、ライザ以外の他の誰かを抱きたいとも思わない。
だけど、毎回スカーレット相手でも気持ちよく精を放っていたんだ。
気持ちと体は別だ。それを実感してしまった。
勉強のつもりでも浮気は浮気。それも何度も。
今更ながら、どうしてこの僕にそんな大それたことができたのかわからない。
その後、ライザに襲いかかった出来事を結婚式直前まで知ることもなく、彼女の心身が更に傷ついていたことを知らなかったんだ。
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