裏切りの結末

しゃーりん

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僕がアデライン夫人を呼び出すことは無理だ。

ライザ宛の手紙と共に夫人宛のお礼の手紙をいつも入れているが、手紙が開封されているかどうかがわからなくなってしまったからだ。

僕やライザの兄が呼び出すのは、侯爵家にあらぬ誤解を招く。

ライザの兄の妻が友人に協力を願い、アデラインを伯爵家に連れてくることになった。


「これはどういうことかしら?私を呼び出したのがあなたたちということでしょうか?」

「ええ、そうです。あなたに聞きたいことがありましてね。
 侯爵に知られないように招待状を送りにくいのでこのような形になり申し訳ございません。」

「そう。で、何かしら?」

「ライザの修道院はどこでしょうか。教えていただけますか?」

「あぁ、ライザのこと。随分と今更な話ね。絶縁したでしょう?なのに、どうかして?」

「妹に会いたくなったのです。どこでしょうか。」

「さあ?どこだったかしら。」

「……僕の手紙を10年間送ってくださっていますよね?忘れるはずがない。」

「手紙?あぁ、ふふ。あの恋文ね。バカみたいに会いたいと言ってる手紙。送ってないわよ?」


アデラインはそれが当然のことのように平然と言って笑った。


「どういうことですか?
 僕がいつかライザを迎えに行きたいと言った時、あなたが手紙を送ってくれると言いました。
 嘘をついていたのですか?」

「そうよ?10年も気づかないなんて、あなたって本当に愚かな男ね。
 ねえ、知ってるかしら。
 あなたが浮気した相手、バリーが仕掛けたのよ。」

「は?」

「あの男爵令嬢、バリーの遊び相手だったの。
 あなたとライザを別れさせようと、バリーが考えたのよ。
 あの女があなたを連れて行った部屋、バリーが愛人を抱く部屋よ。
 あなたがあの女に夢中になってライザを捨てることを望んでいたの。
 だけど、あなたとライザは別れなかった。 
 バリーはライザを襲ったのに、あなたは許した。
 だけど、ライザがバリーの子を生んで、バリーは高笑いをしていたわ。
 それで、私を捨てようとした。
 何人も遊び相手がいたけれど、黙認してあげていたのに。
 冗談じゃないわ。どうしてライザなんかに私が負けるの?許すわけないじゃない。」

「……ではわざとライザを修道院に?」

「そうよ。寄付金なんて送ってない。絶縁するなんてライザは言っていない。
 逆に、家族に絶縁されたってライザには伝えてあげたわ。
 この家にはバリーのいうことを聞く使用人が何人もいると教えてあげたの。
 その使用人たちがライザを眠らせて夜中にこっそり運び出してあなたはバリーに監禁される。
 ライザにはそう伝えたの。怯えていたわ。
 すぐに私が用意した馬車で修道院に行くように言ったわ。
 落ち着いたら、そこから出してライザの家族が住み家を用意するようにお願いするからって。
 でも、家族からは絶縁されたって伝えてあげたから絶望したでしょうね。
 あの修道院は、家族の誰かが申請しない限り自分からは出られないの。罪人じゃなくてもね。
 10年。あの子はどうなっているかしらね?」

「何てことを………」

「あら。私はあなたたち家族が書いた絶縁状を送っただけよ?
 私が言ったことを確かめることもなく信じたあなたたちに非がないとでも?
 あぁ、手紙は送らなかったわね。だって可哀想なんだもの。
 ヒューイット様は離婚してもう夫じゃないわ。家族ではなく他人だもの。
 あんなに、迎えに行く、会いたい、愛してるって書かれた手紙を読んでも未来はないから。」


ライザはこの10年間、家族から絶縁され、誰からも手紙が来ることもなく、寄付金を持参しなかったために貴族扱いはされず、最下層の罪人によりも少しマシなだけの位置から修道院生活が始まったということだろう。

貴族の令嬢には過酷な生活のはずだ。

僕たちが泣いている場合ではない。早く助けに行かなければ。


 
 


 
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