父の幸せを壊したのは私

しゃーりん

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王都に着いた数日後、伯母ミオナと共にアレックはエレイズ侯爵家を訪れた。


「ようこそいらっしゃいました、ルシェット伯爵様、アレック様。」


腰の低い執事に案内された応接室にすぐに表れたのは、エレイズ侯爵だった。

彼はアレックを一目見て、固まった。
驚いたのだろう。
アレック本人も驚いた。 

間違いなく親子だとわかるくらい、似ているのだから。
母が不安に思わなかったわけがわかった。
 

「あぁ、すまない。……ディケイド・エレイズ侯爵だ。」

「アレック・タッシュです。初めまして。」


エレイズ侯爵は口元を手で覆い、動揺しているようだった。


「エレイズ侯爵、まさか、ご自分の子か疑う気持ちがあったなどとおっしゃいませんよね?」


伯母のエレイズ侯爵を見る目は冷たい。


「とんでもない!いやしかし、ここまで似ているとは思いもせず驚いてしまった。申し訳ない。」


エレイズ侯爵は伯母に謝罪した後、アレックに向き合った。


「私が君の父親だ。君の母上が私のことをどう伝えていたかはわからないが、私が愚かだったせいで別れることになり、君のことも知らないままだった。本当に悪かった。」

「僕が知ったのは三年前です。ずっと今の父が一緒だったので事実を知っても特に思うところはありませんでした。母からは親戚のおじさんに会いに行く気持ちでいいんじゃない?と言われたので、申し訳ありませんが、父という気がしません。」

「親戚のおじさん、か。はは。それでもいい。来てくれて嬉しいよ。」


エレイズ侯爵は泣きそうな顔で笑った。
よく見ると、そこそこ年を取っているのがわかる。

アレックと11歳離れた姉がいるのだから、この人は40半ばを過ぎているのだと気づいた。


「それで、跡継ぎになることを視野に入れて侯爵家のことを知りたいと思ってくれているのか?」

「そうですね。興味はあります。僕、好きな子がいるんです。彼女と婚約するためにも、前向きに努力したいと思っています。」


アレックがそう言うと、伯母もエレイズ侯爵も驚いた。


「好きな子って……貴族の令嬢だろうか?」


まさか、平民じゃないよな?と聞きたいのだろう。
もし平民なら、跡継ぎの話はここでなかったことになったと思う。
平民女性を侯爵夫人にするわけにはいかないだろうから。


「一緒に育った、アンジェラ・タッシュ。辺境伯の長女です。」


伯母もエレイズ侯爵もホッとしていた。


「うん。辺境伯の長女、か。好きな女性と結婚できたらいいことだと思う。」

「反対しませんか?」

「いい相手だと思う。反対しないよ。」


エレイズ侯爵は自身の二度の結婚と、娘の結婚相手も失敗だったと母から聞いていた。
なので、勝手に選ばれないように先に伝えておこうと思い、アレックはアンジェラの名前を出したのだ。


「……カティアナ、君の母上は元気だろうか?」

「元気です。母は割とあっさりした性格ですから、昔のことはもう何とも思っていないと思います。」

「そうか。今が幸せだからなのだろうな。」


エレイズ侯爵は後悔しているのだろう。
未練があるのかもしれないが、母にはない。

 
その後、アレックは好きな時に屋敷に来ていいと言われ、アレックにエレイズ侯爵家や領地のことを教えてくれる者を手配してくれるという。

リイサという姉の話は出ないまま、アレックは伯母と共に帰った。


 
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