身近にいた最愛に気づくまで

しゃーりん

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ジュディに求婚しようとヴェントスは部屋に戻った。

だがそこにはジュディはいない。

そうだった。ジュディは今、侍女の仕事をしていない。
寝室を挟んだ向こうの部屋でルーベンスの授乳をしているはずだ。

9歳の時にジュディと眠るようになってから、子供といっても2人で寝るには大きなベッドがよかった。
なので、大きなベッドのある部屋に移ったら、そこはいわゆる夫婦の続き部屋なのだ。
昔はそんなことに気づくはずもなく、反対側をジュディの部屋にすればいいと言った。

俺たちはずっと夫婦の部屋を使ってきたのだと今更ながら思った。

廊下に出ることなく寝室を通ってジュディのところへと向かった。


ジュディはルーベンスにつけられた侍女と楽しそうに話をしていた。
公爵家の主人に接する使用人たちは俺とジュディの関係を知っているし、ルーベンスが誰の子供かも知っている。

万が一、誰かが裏切って本当のことを言ったとしても、ヴェントスの子供なので構わない。
王家も、王女の子供でないと知っても認めることはしないだろう。

セレスティーナの喪が明け次第、すぐにジュディと再婚すれば結婚の申し込みが来ても手遅れだ。

俺はジュディに求婚を断られることなど考えていないと気づき、苦笑する。



俺に似ているルーベンスが、ジュディの乳首に吸いついている。

心温まる光景ではあるのだが。

……俺のだから早く返してほしい。と我が子に嫉妬してしまう。

母乳を飲み終えたルーベンスを抱いて侍女が部屋を出て行った。
 


さあ、求婚をしよう。

あ………花もない。指輪もない。場所もここで?


「ヴェントス様?」


ジュディに声をかけられて、ついさっきまで冷静だと思っていたのに違ったようだ。

そうやって問いかけてくる表情がとても可愛くて、愛おしい。

そうか。いつもジュディに何とも言えない感情を抱いていた。

それは、愛おしいという気持ちだったのだろう。

あぁ、ダメだ。気持ちが溢れる。


「ジュディ、愛してる!!」


あれ?結婚しようと言うつもりだったのにな。

でもこれがジュディに一番に伝えたい言葉なのかもしれない。

自分でも驚いたが、間違っていない。

求婚の前にまずは告白するべきだもんな。

恋愛に一喜一憂する友人たちを冷めた気持ちで見て、俺には備わることのない感情だと思っていたけれど、違った。この感情が愛なんだな。

ただ単に俺は鈍かっただけだ。

どうりで、元婚約者のアネモナや学園で声をかけられた令嬢たちに誰も興味を持たなかったわけだ。
モールメント公爵家に迷惑をかけない常識のある令嬢であれば、子供を産んでくれたら自由にすればいいと思っていた。つまり、ジュディがいるから、それでいいとずっと思っていたんだ。

俺はずっとジュディを選んでいたんだ。

この感情が確かなものだと冷静に受け止め、改めてジュディに求婚した。


「ジュディ、君を愛している。俺と結婚してほしい。」


ジュディは驚いた後、とても嬉しそうに微笑んで言った。


「私もヴェントス様を愛しているわ。」


あぁ、俺の最愛はこんなに身近にずっといたとようやく気づき、その最愛に自分も愛されていたと気づいた。




そう。ヴェントスはたった今、ジュディを愛していることにようやく気づいた。

ジュディに求婚すると母に告げた時はまだ気づいていなかったのだ。

……ヴェントスという男は母が思う以上に鈍かった。



<終わり>
 

 




 

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