身近にいた最愛に気づくまで

しゃーりん

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効果は覿面だったようだ。ヴェントスはジュディと体を繋げた。

ジュディは『入れて』と言ったのだろうか。聞きたいけどさすがに聞けない。
息子の閨事情を楽しむ母親だと思われたくない。


「あの、避妊薬をいただけますか?」


やはり息子はナカで出したようだ。妊娠させるつもりだろう。


「ダメよ。妊娠しても産めばいいわ。もうヴェントスも結婚するから構わないわ。」


ジュディとセレスティーナ王女のどちらが先に妊娠するか。
公爵家の子供なのだから、どちらが先でも構わなかった。
セレスティーナ王女は一人しか産まないだろう。王家ともそういう約束だから。
なのでジュディがヴェントスの子供を産んでも問題ない。

子供が一人しか産めなかった私は姑に散々文句を言われた。
夫は愛人を作らなかったが、姑から何人も紹介されていたことは知っている。
一時期、姑から逃げていたから愛人でなくとも浮気はしていただろう。外に癒しを求めたのだ。

公爵家の嫁として、私はずっと綱渡りをしている気分だったのだ。
ヴェントスが何事もなく成長してくれてホッとした。


セレスティーナ王女との初夜は、サッサと済ませたようだった。半時間ほどで部屋を出たらしい。
王女が純潔ではなく何度も経験があったことがよかったのか、丁寧に解す必要もなかったのだろう。
潤滑剤を準備したと聞いていたので、時間をかけるつもりがないのは明らかだったから。

そして自分の部屋に戻ってジュディを抱いたのだろう。
ジュディはセレスティーナとの初夜の後だとわかっていても、受け入れたようだ。
ジュディは求められて嬉しいのだ。それほどヴェントスを愛しているから。
 
 

そしてジュディとセレスティーナ、どちらも妊娠した。

侍女たちも医師もちゃんといい仕事をしてくれた。
セレスティーナが出産で命を落とす可能性を高めてくれたのだから。

ジュディが出産してすぐ、医師はセレスティーナに陣痛促進剤を打った。
子供を双子とするためだ。予定日が近いと知り、密かに頼んでいた。
太ったセレスティーナが双子を妊娠していたことに気づかなかった。そうするためだ。
出産直後の状態で腹から出てきたのが1人か2人など医師なら誤魔化せるだろう。

セレスティーナの腹から子供を押し出すようにして出産した後、医師は血の止まりが悪くなる薬を打ったらしい。
これは公爵家の指示ではない。医師の独断だ。医師はセレスティーナを殺した。

セレスティーナの死後にそう打ち明けられた。


だが、それは予測していたこと。

その医師も、セレスティーナにつけた侍女も、セレスティーナの純潔を奪った護衛も、セレスティーナに恨みがあった者たちだからだ。

前途洋々である令息令嬢たちを貶めたのがセレスティーナであると気づいた身内や友人。
証拠はなくとも、誰が得をしたかを考えれば首謀者はわかる。

彼女を幸せにしないために報復を狙っていた者たちを知らないふりをして公爵家で雇ったのだ。 

ヴェントスは知らない。

これは夫と私が企んだこと。

後々もモールメント公爵家の害にしかならないセレスティーナを排除したかった。

ヴェントスとジュディの邪魔になるから。

子供の幸せのためにはできる限りのことをする。
 

国王夫妻もセレスティーナの死因を疑わなかった。だから、医師の犯罪はなかったことにした。

そしてセレスティーナや姑に似ていても可愛がれるだろうかと密かに不安に思っていた女の子の孫は王家に引き取られた。正直、ホッとした。薄情な祖母だ。 

残ったのはジュディが産んだルーベンス。ヴェントスの次に公爵家の跡を継ぐ子。
ジュディはまたヴェントスの子供を産んでくれるだろう。
よく動き、健康なジュディは安産だったのだから。

兄に頼んでジュディを養女にしてもらう話は了承を得ている。
早く、セレスティーナの喪が明けてほしい。


私はようやく望む幸せを手に入れることができたと感じた。
 


 



 

 
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