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しおりを挟むその後、一週間経ってもダイアナの記憶は戻らなかった。
今日は国王陛下との面会がある。
父からは、金髪に碧い目が国王陛下だと聞いていた。
父は部屋の入口で止められ、ダイアナだけが先に入室すると、そこには三人の男性がいた。
誰もかれもが金髪に碧い眼。
一人掛けのソファに一人、三人掛けのソファ二つにそれぞれ一人ずつ座っていた。
普通に考えれば、一人掛けのソファに座っている男性が国王陛下だと思われる。
しかし、ダイアナは父から聞いていた。
ひょっとすると、国王陛下はダイアナの記憶喪失を疑っているかもしれない、と。
「失礼いたします。ダイアナ・クロスフォードでございます。お聞き及びと存じますが、記憶を失っておりまして国王陛下のご尊顔も記憶にございません。父からは金髪と碧い眼、とだけ伺っておりますが、ここにいる皆様は同じお色。わたくし、困っております。」
ダイアナは、こんなイタズラを仕掛けた国王陛下に若干失望していた。
不敬だと言われても構わなかった。
ここは謁見場でもないただの応接間であるため、罰せられる可能性はほとんどないとわかっていたが。
すると、三人掛けの一人が立ち上がった。
「すまなかったな。記憶喪失が本当なのか、ダイアナを試すようなことをした。私が国王だ。」
他の二人も立ち上がり、二人とも茶髪になった。金髪はカツラだったらしい。
父も部屋の中に呼ばれ、中であったことを聞いて不機嫌になっていた。
「ダイアナが国王陛下を騙すようなことができるとお思いで?」
「いや、まぁ、確かに、そうだな。ダイアナに記憶喪失ような姑息なことは無理か。」
「国王陛下を思い出すこともなかったようですし、もうよろしいですか?」
「あぁ。そうだな。学園にはそろそろ通うのか?」
「そうですね。学園で思い出すきっかけがあればいいのですが。」
この一週間、近場で行ったことのある場所を訪れたりもしたが、記憶は戻らなかった。
応接室を出て、廊下を歩いていると声をかけられた。
「ダイアナ!」
金髪に琥珀色の眼、ジルベール王太子殿下ではないかと思うと、父がジルベール殿下だと言った。
彼はこちらに来いと言っているらしい。
おそらく、父から離れて話したいことがあるのだと思った。
「すぐに済むだろう。ここで待っているから行っておいで。」
父は、どうせ大した話ではないと言いたげだった。
ダイアナはジルベールの方に歩いて行った。
「記憶がないというのは本当か?」
「はい。ジルベール王太子殿下。」
「……学園では俺に話しかけるなよ。わかったか?」
「かしこまりました。」
「……ふん。」
ただそれだけが言いたかったらしい。
本当に大した話ではなかった。
今日は平日である。
それを言うためだけに殿下は学園を休んだのではないかという気がした。
* * *
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