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ダイアナは18歳の誕生パーティーまでの話を聞いた。
パーティーは誕生日の前日に行われたということで、6日前のことになる。
「わたくし、ダニエル・ストーンズ様と婚約したのですか!?」
ジルベールと婚約解消したことも驚いたが、ダニエルと婚約したことも驚いた。
わずか一年で、どうしてこんなことに?
「まさか、ちょうど一年で記憶を取り戻すとはな。何がきっかけだったんだか。」
父はダイアナの記憶喪失がちょうど一年で終わったことが不思議らしく首を捻っている。
確かに、頭をぶつけた衝撃とかでもないのに、急に記憶をなくして急に記憶が戻ったのだから疑問に思う。しかし、そのことよりもダイアナはどうしてその一年間の記憶を忘れてしまったのかとそっちの方が問題だった。
父の話から、この一年の流れは大体わかったが、ダイアナ本人の気持ちの動きがわからず、ほとんど話をしたこともないダニエルと婚約しているという事実に困惑しかなかった。
どうすればいいの?
「あ、もうすぐダニエルが来るぞ。ちょうど話し終えてよかった。彼も記憶が戻ったことを知ったら驚くぞ?」
「え!?今日、お約束をしているのですか?」
心の準備がまだできていません!
「ああ。準備をしておいで。」
「……はい。」
父は考えを纏める時間を与えてくれる気がないらしい。
ついさっきまで、ジルベールの婚約者だと思っていたら婚約が解消されていて、クラスメイトでしかなかったダニエルと婚約したばかりだなんて。
そんな大事なことを覚えていないことが不安に感じた。
ダイアナが着替え終わると、ダニエルが到着していると聞いてテラスに向かった。
「ダイアナ、今日も会えて嬉しいよ。」
ダニエルが美しい微笑みを浮かべてダイアナにそう言った。
「……ストーンズ様。あの、……」
「ダイアナ?……ひょっとして、記憶が戻った?」
ダイアナは頷いた。
ダニエルと呼ばなかったから気づいたのだろう。
「もしかして、僕と婚約したことを覚えていない?」
「……ごめんなさい。ええ。覚えておりませんの。」
ダニエルに、非常に申し訳ない思いがした。
「……そっか。記憶をなくしていた間のことを全部、覚えていないということ?」
「そうです。本当にごめんなさい。あなたが結婚したいと思ってくださったダイアナはわたくしではないのです。婚約を、解消しましょう。」
ダニエルは騙されたようなものだと思った。
だから、婚約を解消するべきだ。
ダニエルは、ダイアナと親しくなったことで、ケイトリンとの婚約を解消することになってしまった。ダイアナと一緒にいなければ、ケイトリンはいつか恋人と別れてダニエルの元に戻っていたかもしれない。
ダイアナは、ケイトリンからダニエルを略奪したようなものではないか、父の話を裏返せばそう思ってしまった。
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